
子どもが生まれてから、夫婦の性生活が消えた――。そんなケースは日本では少なくない。セックスレスは課題なのか、現代社会の必然なのか。
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出産後、一度もしたことがない
「子どもを産んでから、夫とそういう行為が一切できなくなりました」
こう話すのは、夫と4歳の子どもと3人で暮らしている東京都在住の専業主婦の女性(38)。出産を機に、夫と性交渉ができなくなり、「出産してからは一度もしたことがない」という。
もともと、「性に対して淡泊なほう」という女性。結婚前、4年間の交際時、最初のうちこそ性交渉の頻度も高かったが、関係が長くなるにつれ、徐々にペースダウン。それでも結婚後は、2〜3カ月に1度のペースでは夫婦生活を営み、第1子は自然に授かった。
出産後は、子育てに追われる毎日が始まった。里帰り出産し、産後2カ月は実家で過ごしたが、夫は産後1週間だけ休みを取り、仕事中心の忙しい日々に戻った。実家から東京に戻ると、夜通し泣き続ける子どもをあやすのも、お風呂に入れるのも、ミルクをあげるのも、基本的には全て自分一人。夜遅くに疲れて帰宅する夫を見ると、「それも仕方がない」と思えたが、知らず知らずのうちに不満が澱のようにたまっていった。
今さらそんな気分になれない
女性は出産前まで会社員として働いていた。産休・育休を経て、数カ月間、職場に復帰するも、仕事と子育てとの両立は想像以上に綱渡りだった。夫婦ともに実家が遠く、近くに頼れる人もいない。夫は休日にはたまに育児や家事を手伝ってくれるが、平日はほぼワンオペでの育児だ。子どもを保育園に預けての時短勤務とはいえ、「今は子育てに専念したい」という気持ちが勝り、子どもが2歳の時に退職し、専業主婦になった。
夫婦ともに、2人目がほしいという気持ちはある。年齢を考えると「そろそろ動かないと」と思うのだが、どうもその気になれない自分がいる。女性は言う。
「どうしても、今さら夫とそういうことをする気分になれなくて……」
ホルモンバランスの変化や、母となって目の前の子どもと向き合うなかで、「そういうことをしようという気が、そもそも起きない」というのもある。だがそれ以上に明確なのが、「夫とそういうことをしたくない」という気持ちだ。