内閣府の「性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究」に関わった、立命館大学の筒井淳也教授(社会学)は言う。
「九州が特に男性優位という根拠は見つからず、平均的な水準でした」
この調査研究では都道府県別のデータは公表していないが、筒井教授によると「家事・育児は女性がするべき」などの男性優位に関する質問に対して、男性優位の意識が若干目立ったのは、東北、中部、四国の一部の県だという。
日本家族社会学会の「第4回全国家族調査」でも、南関東と比べて、九州は保守的意識が強いわけではなかった。「今後の調査で地域差が見つかるかもしれませんが、現段階では地域差は小さく、傾向を見いだすことは難しい」(筒井教授)
それよりも、注目すべきことがあるという。
「家事負担が全国的に女性に偏っていることです。フルタイムの正規雇用夫婦で、夫は食事の準備を週に0.9~1.6回しか行っていません」
男女平等は全国の課題
確かに、共働きなのに「子どもを保育園にお迎えに行くのはいつも私」「育児と仕事が両立できなくて、退職した」という首都圏出身の女性たちの嘆きは幾度も聞いたことがある。
都道府県別のジェンダーギャップ指数を見ると、政治・行政・教育・経済の各ジャンルで九州7県の最高位は行政6位の福岡県だ。だがそもそものトップが、政治(東京0.382)、行政(鳥取0.488)、教育(徳島0.729)、経済(高知0.452)と、ほとんどのジャンルで女性の進出に課題が大きいことがわかる。
関西学院大学の三輪敦子教授(ジェンダー)はこう話す。
「男尊女卑はそもそも全国的な問題です。明治憲法下の民法で家父長制が制度化され、高度経済成長期を通じた核家族化のもとで『男性は働き、女性は家を守る』という性別役割分担の固定化が強化されました」
この固定観念は、令和の今なお再生産されているという。
「昨年まで厚生年金は、サラリーマンの夫が専業主婦を養う家庭がモデル世帯として制度が組み立てられてきました。年収103万円の壁があり、主婦の女性は自立しづらいまま。男尊女卑を支える制度が続いています」(三輪教授)
男尊女卑が全体の問題であるにもかかわらず、「さす九」という言葉が広がる背景を、神奈川大学の駒走(こまばしり)昭二教授(日本語学)はこう分析する。
「人間はカテゴライズしてネーミングするのが好きです。九州内外の人が『九州男児はこういう人』とカテゴライズしているのではないか」