「さす九」が話題だが、モヤモヤを抱く人は九州に限らない。関西出身の女性は「焼き魚を食べるとき、身のきれいな方や大きい方を夫に出します。これも『さす九』でしょうか」と話す(写真:Getty Images)
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「さすが九州」、略して「さす九」。九州に根付くとされる“男尊女卑”精神を揶揄するワードがSNSで話題になった。男尊女卑は九州に特有の問題なのか。AERA 2025年4月14日号より。

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 中学生のころ、家族でうどん店に行った。限定の特製カレーうどんを頼み、「あ~おいしかった」と店を出たところで、専業主婦の母から注意されたことがある。

「お父さんより高いもの頼んだらいけん」

 父が食べたのは肉うどん。自分が頼んだ特製カレーうどんは、肉うどんより300円ほど高かった。初めて聞いた“ルール”に戸惑ったが、確かに自分は父の給料に頼って生活している。そう考えると、反論できなかったのだ。

「さす九」で議論百出

 3月上旬、「さす九」という言葉がSNSで話題になった。「さす九」とは「さすが九州」の略で、九州地方に根深いとされる「男尊女卑」を揶揄する言葉だ。3月9日付の西日本新聞の記事をきっかけに、SNSでは異論・反論含めて議論が百出し、さまざまな体験談も投稿された。

 親戚が集まると、男性たちは居間で宴会を繰り広げ、女性たちは台所で料理──。

 実は、記者(33)は福岡県出身だ。「さす九」が話題にのぼり、ギクリとするとともに、「私だけじゃなかったんだ」とどこかでホッとした。

 記者として、社会のジェンダーハラスメントや夫婦の家事分担について「男女平等」という立場で考え、取材してきた。けれど、自分が育った家庭については「うちだけの事情かも」と気後れし、話すことはなかった。

 改めて、周囲の九州出身の女性たちに聞くと、「男尊女卑」体験が浮かび上がってきた。

夫と息子だけ牛肉

 大分県に住む40代女性は6年前、九州出身の友人一家と焼き肉に行ったとき、友人(女性)から衝撃の言葉を聞いた。

「うちの夫と息子は牛肉を食べるけど、私たちは鶏肉と豚肉を食べようね」

「びっくりでした。本人はいたって普通の様子だったので、それが日常なんだと思います」(40代女性)

 福岡県出身で東京の物流会社に勤める女性(33)はこう話す。

「地元にいたときは男尊女卑を感じなかったけど、家を出てから自分の親戚を見ると、『女性は男性を立てるもの』という雰囲気があるなと思う」

 こうした話を総合すると、確かに九州には今なお男尊女卑の精神性が潜んでいるようだ。だが、それは本当に九州に限った話なのだろうか。

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