おでんの注文は、両国店だけでなく、北九州の店舗でもタッチパネル方式に切り替わっている。(撮影/古寺雄大)

 満席の店内にもかかわらず、すぐにおでんが到着した。味の染みた大根や牛すじ串に思わず、おでんの追加を頼みたくなるが、その矢先、うどんとカツ丼も到着。どれも北九州で食べた味とまったく変わらず、まるで帰省したような気分になる。

 なぜこのタイミングでの首都圏出店となったのか。

 24年に資さんが「ガスト」や「バーミヤン」で知られる「すかいらーくホールディングス」の一員となったことが、ひとつの要因と考えられがちだ。しかし、実際には、すかいらーくグループに入る前から関東進出は決まっていたという。株式会社資さんの広報・伊藤典子さんは、こう語る。

「弊社は1976年に北九州で創業し、福岡県内や山口県の一部など限られた地域でドミナント展開をしてきました。それが、18年に代表取締役社長として、ユニクロを展開する株式会社ファーストリテイリングで執行役員を務めていた佐藤崇史が就任し、九州各地や岡山県など、少しずつエリアを広げて出店を進めてきたのです」

両国店の外観(撮影・古寺雄大)

大阪で好評を博す

 23年には大阪・今福鶴見に出店。これが関東進出の大きなきっかけとなったという。

「関西は出汁文化が根強く、食へのこだわりがあるお客様が多い地域です。そこで成功できれば、エリア拡大の足がかりになると考えていました。実際に大阪で好評を博し、以前からあった『東京にも出店してほしい』という声が、大阪出店以降ますます増えたことも後押しになりました」(伊藤さん)

 こうして資さんの関東進出は本格化する。24年7月には東京・神田に期間限定のポップアップストアをオープン。1日400食分の限定販売にもかかわらず、開店前にはすでに320人の行列ができるという“伝説”を残した。

 冒頭で紹介したように、24年12月には東京よりも先に千葉県に八千代店がオープン。駐車場はすぐに満車となり、1日の売り上げは平均200万円にのぼるほどの大盛況ぶりだ。伊藤さんいわく、「深夜から早朝以外は、かなり混雑している」状況だという。

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