
この人気ぶりもさることながら、24時間営業という業態も、今の時代には珍しい。都内の多くのファミリーレストランが深夜0時前に閉店するなか、資さんのスタイルは異彩を放つ。
「資さんうどん発祥の北九州は、かつて製鉄や重工業が盛んだった地域です。この地では24時間、3交代制で働く方がたくさん暮らしていました。その人たちに『いつでも温かい食事を提供できるように』ということで、24時間営業が始まったのです。この創業時の精神を受け継いで、現在も約7割の店舗は24時間営業を続けています」(同)
それにしても、資さんフィーバーが過ぎるのではないか。筆者のような北九州出身者が郷土の味を懐かしんでいるだけでは、長い行列ができるとは考えにくい。もしかすると、首都圏のうどんチェーンを独走してきた丸亀製麺とはなまるうどんの“2強”に対し、「第3の選択肢」として、資さんうどんが求められているのだろうか。
「1980年代後半頃から、長らく『讃岐うどん一強』とも言える時代が続いてきました。しかし、格安航空会社の登場などで国内移動のハードルが下がったこともあり、“美味しいうどんは讃岐だけではない”という認識が、ここ10年ほどで体感を伴って広く浸透してきたのです」

“やわ”という個性を違和感なく
そう語るのは、『東京最高のレストラン2025』(ぴあ、共著)などの著作で知られる、食文化に詳しいジャーナリストの松浦達也さん。
「そんななか、資さんはほかの福岡のチェーンの『やわうどん』と比べても、コシがわかりやすい。コシが感じられながらも福岡うどんならではの柔らかさも備えているため、福岡県人以外にも“やわ”という個性を違和感なく受け入れられやすい食感なのです」
今後、丸亀製麺やはなまるうどんと、資さんうどんによる対立構造が生まれるのだろうか。
「資さんはメニュー数が多いため、厨房スペースをしっかり確保する必要があります。そのため、現状では駅ナカなどの小規模店舗ではなく、郊外の大型店舗を中心とした展開を想定しているはずです。そのため、丸亀製麺やはなまるうどんを“食う”というより、うどん市場全体が活性化していくと考えています」(松浦さん)