本連載の書籍化第6弾!『鴻上尚史の具体的で実行可能なほがらか人生相談』(朝日新聞出版)

【鴻上さんのこたえ】

 生きるのがつらい母親さん。大変ですね。しかし、なんというペンネームにしたのですか。本当に切羽詰まっているんですね。

 このペンネームで呼びかけると、よけいつらくなってしまいますから、「生きる」さんにしますね。お、名作映画のタイトルですね。

 生きるさんの相談を読んで、じつは、僕は、息子さんの状態に対して、ある考えを持ちました。

 生きるさんは、息子さんの中学時代を「反抗的で、それは成長過程にある事」と書かれていますが、その後もずっと続いているのですから、「思春期」とは違うんじゃないかと僕は考えます。

 また、一人暮らしをすると、「特殊清掃を頼まなければならない程の酷い汚し方」というのも、気になりました。

「パソコンゲームで小銭を稼いでいる」というのは、どれぐらいの金額なのでしょうか。一万円を入れるように頼んでも、そんなお金がないということは、本当に小銭ということなんでしょうか。

 もし、部屋にこもりながらも、一定の金額を稼いでいるなら、社会とのつながりを作ることも、自立することも可能でしょうが、息子さんは、そうではないということですね。

 生きるさん。「私の育て方が悪かったとしか言いようがありません」と書かれていますが、どう悪かったか自覚はありますか?この「ほがらか人生相談」に送られてくる多くの毒親のような育て方をしましたか?「しつけ」と称して小さいころから過剰な体罰を与えたり、真冬に家の外に押し出したり、家事全般を押しつけたりしましたか?

 もし、生きるさんにそういう心当たりがあるのなら、話はそこからです。

 息子さんにやったことをひとつひとつ、話して、理解し合うしかありません。

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