
その翌日には、グーグルが方針転換したDEIの廃止についても声明を出した。
「IT企業の中で、労働者が、人種差別やジェンダー、LGBTQ差別と闘う運動を通じて獲得してきた利益に対する真の攻撃である。これは、公民権運動にまでさかのぼるような話だ。AWUが闘うことを約束しているIT企業内で広がる右翼的、反労働者的傾向の課題の一環でもある」(同前)
DEIを考慮した採用目標の廃止や、AIを兵器や監視に応用しない方針の削除などは、トランプ政権が生まれたことで、より踏み込みやすくなったことなのだろう。だが、この流れ自体は、トランプ政権で始まったものではないとマクマートリーさんは話す。「2022年から始まった大規模解雇の延長だと思う。働き手の力が大きすぎると役員たちが感じ始めていたのだろう」。かつてはIT業界も転職がさかんで、多くの人びとが起業を夢見ていた。だが、IT業界がだんだんと成熟し始める中で「解雇」にも直面するようになっていた。
グーグルは2023年1月にも、世界で約1万2千人を解雇すると発表した。これを受け、AWUには一気に約200人が加わった。「みんな自分が次のザッカーバーグだ、いまは仮の姿だと思っていた。でも今いる職場を改善することが大事だという気づきが生まれた」
2025年2月、筆者とのオンライン取材の前日にも一部の職場では、解雇の方針が示されたばかりだった。「いま、社内でも、トランプ政権に対する企業の対応を快くなく思っている人はたくさんいる。ただ、組合員の大多数の関心は自らの雇用だ。まず自らが安定しないと、発せられない声もある」
その上で、マークマートリーさんは言った。「AWUとしては、解雇するにしても一定の水準の退職金を出させ、それが度重なる解雇でも維持されるように働きかけている。そういったところでは成果も生まれている」