ロサンゼルス・ドジャースの「公式焼酎」になった「大分むぎ焼酎二階堂」とニカソー=二階堂酒造提供

「野球」という独自の販売戦略

 二階堂酒造には、日本初の麦100%の本格焼酎を作り上げたという自負がある。国外販売用に新たにデザインされた「二階堂」のラベルには「NIKAIDO “the original”」「SHOCHU」と印刷された。

 海外へ進出する際は、すし店などの日本食レストランに焼酎を置いてもらうのが常道だが、新規参入メーカーである二階堂酒造は独自の方法を探った。

「米国では『焼酎』はほとんど知られていません。焼酎を受け入れてもらうにはその国の文化と深く関わることが大事だと考えました。その一つが、『スポーツ観戦』で飲んでもらうことでした。ちょうど大谷翔平選手がドジャースに移籍するという話があったころで、『スポーツ観戦』『ドジャースタジアム』で販売する、という検討は並行して行われました」

 まずドジャースタジアムのスイートルームで提供することを、「二階堂」を扱う現地の酒類卸会社が球場側に提案し、採用された。昨年3月から約30のスイートルームに二階堂のボトルが置かれるようになった。900ミリリットル入りで55ドル。

「昨年6月、スイートルームに関係者を招待してPRイベントを開き、みなさん、ロックやソーダ割で二階堂を楽しまれました」

 そして前述のとおり、今春からはいよいよ一般席でも販売を開始する。

「この1年、ドジャース側との信頼関係を築くことができたからこそ、パートナーシップ契約を結ぶことができた。より大きなPRの機会となる一般席での販売が可能になったと思います」

 日本文化に興味を持つ一部の人だけでなく、「多くの米国人に二階堂のファンになってもらいたい」と、亨介さんは語る。

「日本の焼酎をスピリッツの一つとして認めてもらうという夢を実現するには、10年、20年、ひょっとすると30年くらいかかると思いますが、一歩一歩堅実にやっていきたい」

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)

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