ほり・じゅん/1977年生まれ。8bitNews代表理事、わたしをことばにする研究所代表、早稲田大学グローバル科学知融合研究所招聘研究員。2001年NHKに入局し、13年に退局。現在、TOKYO MX「堀潤 Live Junction」のMCはじめ、ABEMA「ABEMA Prime」などに出演(撮影/写真映像部・和仁貢介)
この記事の写真をすべて見る

 AERAで連載中の「この人のこの本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。

【写真】次の防災につなげるために書き残した一冊『災害とデマ』はこちら

 『災害とデマ』は著者である堀潤さんがNHK退局後のおよそ10年間の取材で訪れた、国内外の自然災害や紛争による被災地で市民と共に発信をしてきた経験を、次の防災につなげるために書き残した一冊。堀さんに同書にかける思いを聞いた。

*  *  *

 NHKのアナウンサーだった時、地震や水害などの災害報道に疑問を持った。中継車が止められるところに行き、被災者にマイクを向け、こちらが伝えたいことを伝えるだけ。そこに、権力性があると感じた。

「そうじゃない、『堀さん、私のことを発信して』『伝えてください』。そういうSOSに対し、『一緒にやりましょう』という関係を築きたかった」

 堀潤さん(47)は振り返る。

 2013年にNHKを辞めるが、在職中に市民メディア「8bitNews」を立ち上げ、被災者とともに情報の空白を埋める報道を続けた。

 本書は、堀さんの10年以上にわたる災害取材の集大成だ。東日本大震災(11年)、本地震(16年)、昨年元日に起きた能登半島地震と、同9月に能登北部を襲った豪雨。さらに、大手メディアが報道しない地震や台風、水害といった「名もなき災害」。こうした災害が起きると、堀さんは自身のLINEのIDをSNSで公開し、支援が必要な人に「連絡をください」と呼びかけた。届いたSOSを精査し、速やかな支援が必要と判断すれば、現場に急行し、信頼関係を構築しながら、被害の情報をSNSなどで発信し支援に繋げてきた。

 能登半島地震では、高齢の両親の安否がわからないという家族からのSOSを受け、孤立集落を目指した。途中、道路が陥没したため小雨が降る中、徒歩で山越えをし、安否を確かめ、家族に連絡した。

 同時に、災害現場では、デマがはびこり「嘘のSOS」がSNSで拡散される。

次のページ