
その後も「家事とは何か」を男性側に訴え、互いの負担の違いなどを考える記事が続いた。
一方で、男性側の想いを丁寧に書いた記事も増え始める。
「男がつらい 仕事も家事も育児も完璧なんて無理だよ!」(14年9月1日号)
「帰りたい夫。『不在夫』たちが激白、家に帰れない本当の理由」(15年2月16日号)
どちらの記事にも、できる限り子育てに関わりたい、家事をしなければ、と思う夫が登場する。けれど、職場には「早く帰りたい」と言える雰囲気はない。長時間労働が当たり前で、帰宅は毎日夜10時を過ぎる。妻の口癖は「うちは平日母子家庭だから」だ。
家庭と職場の間で板挟みになり、働き方を変えたくても変えられない男性たち。彼らの悲痛な声が報じられるようになると、次第に社会全体に「長時間労働の是正こそ必要だ」という認識が広がり始めた。女性だけではなく、男性たちも悩んでいた。
AERAは24年春、連載「女性×働く」をスタートした。様々なテーマで5~7週にわたって現状をレポートするもので、4回目のテーマに据えたのは「男性」だ。
育休を取った男性らが登場し、「休みたい」と言いにくい会社の雰囲気や、仕事をしてこそ一人前とみられてしまう男性たちの生きづらさも綴った。
対立ではなく寄り添い
同連載で「男は稼いでナンボ、“鎧”からの脱却で男も女もラクになる」(24年8月26日号)を執筆した元共同通信政治部記者で“駐夫”も経験した、ジャーナリストの小西一禎さんは、「女性たちが経済力をつけ、ガラスの天井に負けずにキャリアを積む女性たちが増えました。そこにAERAが果たしてきた役割はとても大きい」と評価する。その上で、期待を込めて、こう付け加える。
「一方で、男性に立ち向かっていく女性の姿を前面に出したことで、対立構造を作ってしまった面はあるのではないでしょうか。強い女性ばかりではなく、そこからこぼれた女性や、男性も一緒に寄り添って理解していくことが求められるようになっています。互いの弱さ、悩みを理解しあう。その観点があれば、結果的に女性も男性もラクに生きられるようになるのです」
女性も男性も、誰もがもっと自由に楽しく生きることができるように。今後のAERAに託された大きなテーマだ。(編集部・古田真梨子)
※AERA 2025年3月10日号