
その価値観は、恋愛の報じ方にも影響を与えていたようだ。自分の上に立とうとする男性よりも、癒やしを求める記事が目立つ。韓流ドラマ「冬のソナタ」が地上波で放送され、「ヨン様ブーム」が起きた時の見出しがわかりやすい。
「ちょいワルより『サマ男』に夢中 ヨン様以外にも『サマ男』の系譜」(04年7月26日号)
秋葉原に通うオタク青年がインターネット掲示板でアドバイスをもらいながら恋愛を成就させていくドラマ「電車男」が大ヒットした時は、こうだ。
「電車男vs.バツイチ男 実は恋愛対象者の豊庫?」(05年4月4日号)
さらに、こんな記事もある。
「女の上げ婚、新基準 格下男でオンナを上げる」(07年11月5日号)
「『草食カレ』と結婚したい 20代&30代 女性300人調査」(09年7月6日号)
女性たちが社会の中で活躍するためには、男性以上に強くならなければならない──。キャリアを積むためには「男性化」するしかない。そんな時代の空気がにじむ。
食器洗いでドヤ顔
10年、「イクメン」が「ユーキャン新語・流行語大賞」のトップテンに入った。厚生労働省は同年6月に「イクメンプロジェクト」を立ち上げ、男性誌はパパファッションやグッズをこぞって取り上げた。
男性たちの変化がもたらした結果に社会が“大賛成一色”になる中、AERAは冷静に状況を見つめる。
なぜ、男性は子育てをするだけで「イクメン」と褒められるのか。女性たちがいつも普通にこなしている家事・育児は、「やって当然」とされて、お礼なんて言われない。そんな苛立ちが記事にも反映されるようになる。
「夫よ、食器洗いでドヤ顔するな! 共働き第一世代の夫婦間家事バトル」(15年10月19日号)
この頃、AERAの記事をきっかけに大きな話題になった「表」がある。
「“朝だけイクメン”はダメ! 家事育児100タスク表で『見える化』」(16年5月30日号)
記事で取り上げた「家事育児タスク表」は、いわゆる「名もなき家事」をひとつひとつ抜き出したものだ。例えば、こうだ。
・加湿器に水を入れる
・お茶を作り置きする
・子どもの爪を切る
・(家の)ゴミを集め、分別する