インターネットのテキスト文化を担うphaさんと品田さん(撮影/中山圭)
インターネットのテキスト文化を担うphaさんと品田さん(撮影/中山圭)
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 2024年10月25日、東京・高円寺の蟹ブックスにて、『納税、のち、ヘラクレスメス』の刊行を記念し、品田遊さんとphaさんの異色対談が実現。ライター、小説家、漫画原作者、YouTuberとして幅広い分野で活躍する品田さんに対し、蟹ブックスのメンバーであり、元「日本一有名なニート」としても知られるエッセイストのphaさんが問いを投げかける。果たして品田さんはどう応じたのか。大きな盛り上がりを見せた注目の対談から一部を要約した、後編を公開する。

※前編「【品田遊×pha】異色の二人が異色の対談!なぜ日記を書き続けられるのか、なぜ日付がないのか、謎に迫る」よりつづく

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周囲の後押しがあったっていい

品田:今やっているラジオや動画も上司の指示でやっているのですが、実はYouTuberになりたいと思ったことはありません。週に6本撮りの仕事をしていますが、こんな環境になろうとは思ってもみませんでした。

pha:そうなんだ。あんなに動画でも活躍しているのに……。上司の方が品田さんの活かし方を理解しているんですね。

品田:確かにそうかもしれません。本当に嫌ならやめるので、私の許容可能な範囲の「しゃあなし」の範囲を理解して振ってくれているのはありがたいことです。また、入社早々に「経理はできない」と伝えており、そこもわかってくれているので助かっています。

pha自分にできないことはやらせず、得意なことを活かしてくれる上司って理想的ですね。

品田:ところで、今は不安定ながらもそれなりにやっていけており、来年くらいまでは生き延びられるだろうという安定は得ていますが、そこに至るまで多くの幸運と巡り合わせが重なりました。実際、私はインターネットの一本の馬の骨でしかなく、今自分が立っている場所の下に無数の並行世界の自分の死骸があって、その上にいるんだという緊張感が常にあります。そのため、心が真に休まることがありません。

pha:無数の並行世界の自分の死骸……。めちゃくちゃ悲観的じゃないですか。意外です。

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