品田遊『納税、のち、ヘラクレスメス』(朝日新聞出版)
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品田:そうかもしれません。phaさんは、インターネットを主軸とした自由業を長く続けていると思いますが、その中で緊張感のようなものはなかったのですか?

pha:僕は楽観的というか、まあ何が起きてもなんとかなるだろ、という感じでずっとやってきたんですよね。運に恵まれたのはあると思いますが。品田さんも、今のような展開にならなくても、どこかで芽を出してそうな気がしますけどね。

品田:そうですかね……。でも、信じることが怖いんです。ネットやSNSで誹謗中傷しているのを見かけると、それが並行世界の自分のように感じられ、自分の攻撃性が拡大された、別世界の自分に責められているような錯覚に陥るんです。そのため、ちゃんとしたことをちゃんとやっている人に対してコンプレックスがあるのかもしれません。

 そういえば、スマブラを作った桜井政博さんが最近YouTubeでゲーム制作に関する動画講座を2年半やっていました。その最終回で、実は2年半分の動画を取り溜めしていたこと、9000万円をかけて収益ゼロでやったことを告白されていました。それを見たとき、崇高な魂に触れるような、仏像を見上げたときの恐怖感に近いものを感じましたね。周囲の後押しに頼らず、自分の段取りで進める足腰の強さが、私には全く欠けている気がしましたね。

phaあれはちょっと特殊な人すぎる気がしますが……。ああいう感じではないだろうけど、今の品田さんの性格だからこそ、人に恵まれ、いろいろな人と繋がりを持って、周りの後押しを得られて活躍されているんだと思いますよ。ちょっと上手くいったら、「俺ってすごい」と調子に乗る人がいっぱいいる中で、調子に乗らない品田さんはいいと思いますね。今のままでいて欲しいです。

潮流の変化に乗って、テキスト文化を盛り上げたい

品田:今行っている仕事を振り返ってみると、再現性のあるメソッドを提供できているわけではないので、少し負い目に感じることもあります。本当は永続的に続けられるようなフィールドを下の世代の人たちに作っていきたいとは思っているのですが……。なまじっか私を含めた数人がなんでもないようなことをして食えてしまっているので、変に若い人の希望になってしまい、なんだか申し訳ない気持ちもありますね。

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