社会は、もっと「声」を聞いてほしい。女性は、最後にこう話した。
「8がけ社会に向けて、できることはたくさんあると思います」
サポート対象は女性だけでない
ロスジェネ世代の単身・非正規雇用の女性たちは、持てる能力を十分に発揮できずに不安定な生活を強いられ、日本社会の「支え手不足」の要因の一つにもなっている。どう乗り越えればいいのか。大阪経済大学の森詩恵教授(社会政策)に聞いた。
いまロスジェネは40〜50代で、そろそろ親の介護が必要になるときだ。非正規雇用では介護で仕事を休むと、有給休暇を取りにくい状況がある。兄弟姉妹がいても、「子どももいないし、非正規なら仕事を辞めやすいだろう」などと思われ、非正規の単身女性に負担が集中しやすい。仕事を中断すれば、自分の年金に跳ね返る。親を看取る責務を果たした満足感はあっても、その後の生活はさらに苦しくなる。これでは支え手不足に拍車がかかってしまう。
既婚者であっても、パートの主婦が働く時間を一定以上増やすと、社会保険料の負担が新たに生じ、手取りが減る「年収の壁」がある。それを避けるために働く時間を減らすことが問題となっている。
「誰でもできる女性の仕事」と低く見られがちな介護などの職種は非正規化が進み、賃金も低水準だ。最低賃金を上げ、同じ仕事の賃金に不合理な差をつけない同一労働同一賃金を進めていく必要がある。
「短時間労働」の導入を
加えて大切なのは、性別に関係なく、高齢者や障害者、病気を抱えている人も含めて、自分の体力や能力に応じた働き方を決めることができ、細やかに調整して短時間でも働けるようにすることだ。ジェンダー平等は当然重要だが、女性だけがターゲットではなく、すべての人が働きやすい状況を社会に広げていく必要がある。
特に、今後ますます増える高齢者の雇用の確保が鍵だ。高齢者は孤独になりがちと言われるが、オンラインで会話を楽しんでいる人も多くいる。高齢者のICT(情報通信技術)を活用する力を上げ、日常生活を支えるインフラとして整えれば、社会参加の拡大につながるだろう。