スタジオの内観イメージ ©株式会社光嶋裕介建築設計事務所
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音楽はつくっている人たちだけのものではない

――音楽リスナーにとっても、とても意味のあるプロジェクトだと思います。いまは音楽をサブスクで気軽に聴ける時代ですが、後藤さんのアクションを通して「ミュージシャンの活動に還元するシステムがないと、豊かな音楽文化は存続できない」という理解が進むのでは?

 こちらとしてはそんな偉そうなことは考えてなくて。ただ、仲間だと思ってほしいという気持ちはあるんです。音楽はつくっている人たちだけのものではないし、むしろ聴いている人たちがどう楽しむかによって、音楽全体の将来が変わっていくので。藤枝のスタジオに対しても、音楽をつくらない人にも参加してほしいんです。幅広い人が支えてくれることによって、音楽シーンの様々な場所で活躍している人たちのクリエイティブな作業が保証される。そういう“ゆるいつながり”をみんなで意識してもらえたらいいんじゃないかなと。このスタジオが100年残ったら、おそらく数万人の音楽家が恩恵を受けるだろうし、そんなに素晴らしい貢献はないと思ってます。クラファンに参加してくれた方はぜひ、「スタジオ、どうなってるかな」って気にかけてもらえたらうれしいです。

――スタジオは2024年の年内着工、2025年秋頃の完成予定だとか。どんな人に使ってほしいと思っていますか?

 音楽をやりたい、作品を作りたいという意欲のあるすべての人に開かれてほしいです。やりたことがあるんだけど、予算が足りない、場所がない、時間がないという人たちの傍らに立ちたいし、それに全力で応える準備をしたいと思っています。使う人たちにも、一緒にスタジオをつくる参加者の気持ちを持ってほしいんですよね。「こうすればもっと音の響きが良くなる」だったり、「こういう仕組みがあったらみんなも助かるよね」というアイデアだったり。本当の民主主義は、ボトムアップでやらないと良くならないんですよ。アジカンの後藤がトップにいて、何から何まで決めてトップダウンで運営するスタジオなんて、絶対よくないですから。どこにいても創意工夫は必要だし、みんなで使いやすくして、みんなで守っていければなと。「お金を払ったんだから、サービスしてくれよ」ではなくて。

――それだと一般的な商業スタジオですからね。後藤さんたちが目指しているスタジオはもっと相互補助的というか。

 そうですね。貨幣を介した等価交換という仕組みから少し離れて、新しい交換様式を生み出す実験でもあると思ってます。もちろんお金は必要なんだけど、音楽スタジオだけではなく、コミュニティを作り出す方法を考えていきたい。そういうモデルを発明できたら、他のことにも転用、展開できるかもしれないですからね。

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