オレキシンを生成できないマウスがナルコレプシー同様の症状を示したことで、オレキシンが睡眠に関連する物質で、視床下部に存在するオレキシン神経細胞からオレキシンが放出されると覚醒が促されることが判明しました。この発見を応用し、オレキシンの結合をブロックする新しい種類の睡眠薬「オレキシン受容体拮抗(きっこう)薬」が2014 年に実用化されました。副作用が極めて少なく、より自然な睡眠を誘導できるとされています。
反対に、オレキシンを活性化させる薬ができれば、覚醒状態に誘導でき、ナルコレプシーの治療にも役立つとして、今も開発が続けられています。
冒頭に挙げた「おなかが空いて眠れない」ということを避けるには、就寝の4時間前までに適切な量を食べること。糖質や脂質が多いと、入眠に時間がかかる傾向があります。一方で、食物繊維を多く摂ると寝つきがよくなるという報告もあります。また、よくかむと健康によいので、夕食は野菜を多めにし、よくかんで食べましょう。
ちなみに、オレキシンはギリシャ語で「食欲」を意味する「orexis」が語源。食欲に関わる物質だと提唱されていたことの名残です。
(構成 生活・文化編集部 上原千穂)