国の統計や調査などは、障害者の男女別、もしくは女性の障害の有無別などといったデータが見られず、障害女性の複合的な困難が可視化されにくい現状がある(写真:Getty Images)

 性的な存在として扱われない一方で、障害のある女性への性的被害も深刻です。被害に遭っても、たとえば言語障害や視覚障害があると被害を訴えても「(加害者は)手伝おうとしただけで、この子は大げさに言って、ウソついてる」と信じてもらえない。障害のない人の声の方が信じてもらいやすく、障害がある人の声は軽く扱われがちです。

藤原:目が見えないのにどうやって立証するの?とかね。2011年の障害女性ネットによる調査では約3人に1人の障害女性が性的被害にあったと回答しています。電車での被害もある。業務放送で乗っている車両や降車駅までアナウンスされたりするので、それを逆手にとる人もいるんです。DPI日本会議からの指摘をうけて一部の鉄道会社では改善されてきていますが。

伊是名:私も電車を降りた後、あとをつけられたり、話しかけられて怖い思いをしたことがあります。でも、手伝おうと声をかけてきた人なのか、邪険にした方がいいのか、迷うんですよね。

藤原:視覚障害者も声をかけられることがあり、ほとんどはいい人なのですが、階段を下りるときに腰に手を回してきたり、ときどき、「あれ、介助の仕方が少しおかしいぞ」ということがある。そこに悪意があるかはわかりにくく、過剰に意識しすぎなんじゃないかと思ってしまったり。むげに断って、声をかけてあげようという気持ちをなくさせたら他の視覚障害者が困ると思ったり、ほんとに難しいですよね。

伊是名:女性障害者へのヘイト感情もすごく感じます。私がSNSで何か発言したときも、私の態度や話し方子育てのしかたなどの行動をあげつらってトーンポリシング的に攻撃してくる。

うまく子育てできないと決めつけられるつらさ

藤原:産む/産まないの自己決定権「リプロダクティブ・ヘルス・ライツ(性と生殖に関する健康と権利)」についても、最も侵害されてきたのが障害女性だと思います。「障害児が生まれるかもしれない」「自分で子育てできない」が、私が中絶を勧められた理由でしたが、「障害がある=何もできない人」と思ってしまうそんな社会の無理解も私たちの生きづらさの要因です。障害者だからこその豊かな子育てもある。それを知ってほしいですね。

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