障害があることに加え、女性だからこそ受ける差別はより深刻だ。性的被害や貧困問題のほか、妊娠や出産を非難されることもある。こうした現状を可視化するため、10月中旬、障害のある女性4人が国連に当事者の声を届ける。参加予定の二人が語り合った。 AERA2024年10月7日号より。
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藤原:女性で、かつ障害者であることによる生きづらさについて、私が気づきを得たきっかけは、いまは私が代表をつとめるDPI女性障害者ネットワーク(障害女性ネット)が2011年に実施した「障害者女性の複合差別実態調査」に協力したことでした。
私の視覚障害は先天性ではないので、障害者になったらこんな差別を受けるのかという「変化」はわかりやすかった。でも、女性への差別はそれまであまり気にして生きてこなかったんです。
ただ、障害がなかった頃は「早く子どもを」と言われてきたのに、障害を持ったとたんにピタリと言われなくなり、いざ40歳で妊娠すると中絶を勧められた。「あ、これが女性であり障害者であることで受ける『複合差別』か」と気づかされた経験でした。
障害者の統計のほとんどは「障害種別ごと」のもの。そもそも性別を書く欄さえない調査もあるなど、障害者が「性のない存在」としてとらえられている背景がある。子どもの頃から父親から疑うことなく「異性介助」を受けたりすることで、自分の「性」を意識できていない障害者も多いようです。
3人に1人が性的被害 相手に悪意があるのか迷う
伊是名:高校の水泳の授業で、移動のために男性の先生が私を抱っこしようとしたとき、女性の友だちが「あ、夏ちゃん嫌だよね」と言って抱っこを代わってくれたんです。私はびっくりした。「あ、嫌って言っていいんだ」と。
子どもの頃から、周囲はあなたのためにやってくれてるんだから、「男性からでも嫌だと言わずに堂々と介助を受ける」のがいいことだと思い込まされている。父親が私のお風呂やトイレの介助を「あえてしない」人だったことや、水泳のときのこの友だちの存在のおかげで、いい意味での自分の女性性を保てた気がしています。