藤原:1979年に採択された女性差別撤廃条約にはまだ「障害女性」の文言がなく、日本で2021年に改正された障害者差別解消法にも「障害女性の複合差別」という言葉が入っていません。今回のロビー活動で、まずは実態を一つでも多く訴えたい。私たちが生きやすい社会というのは、結局は障害のないすべての人にとっても生きやすい社会だと思っています。
伊是名:私いま、朝ドラ「虎に翼」にハマってるんです。登場人物の一人が妊娠して仕事を休まなきゃいけなくなったとき、「母親から男性の3倍がんばって働かなきゃと言われたから、5倍がんばっていまの地位についた」みたいなセリフがありました。私は、「じゃあ、障害もある私は10倍くらいがんばってきたのかな」と思いました。
先輩女性たちのがんばりがあって法曹界に女性が進出してきた。でも、いまの法曹界に障害のある人がどれくらいいるかというと「まだまだ」ですよね。障害のある子がいま直面している状況は、あの頃の寅子と一緒じゃん、と思います。「存在が見えている」だけで満足はできない。「その次」に行かなきゃ私たちはだめだ、と考えています。
【DPI女性障害者ネットワーク代表】藤原久美子さん(60)(ふじわら・くみこ):34歳で糖尿病の合併症により失明。手術により右目は少し視力があり、今は弱視の状態。国内外で女性の障害の現状や政策提言を行っている
【コラムニスト】伊是名夏子さん(42)(いぜな・なつこ):先天性の骨疾患「骨形成不全症」で骨の弱い障害があり、電動車椅子を使っている。総勢12人のヘルパーに支えられ2人の子どもを育てる毎日
(構成/編集部・小長光哲郎)
※AERA 2024年10月7日号