自民党総裁選の所見発表演説会に臨む高市早苗経済安全保障相=24年9月

高市総裁誕生の可能性も…

  一方の高市氏は、自民党の総裁選挙管理委員会が党員などへの文書郵送禁止を通達する前に、政策リーフレットを郵送したことにより、党員に名前と政策を売り込むことに成功した可能性がある。仮にこの推測が正しいとすると高市氏の総裁選挙ルール回避行為によって情勢が左右されたことになり、総裁選そのものの信頼性に疑問が生じる。

 1回目の投票で上位2人が石破氏と高市氏になった場合、決選投票で国会議員票がどう動くのかを見通すことは困難だ。

 ただし 1回目の投票で石破氏が35%を超える党員票を得て、高市氏が20%程度にとどまった場合、2回目の投票で国会議員票を集めて高市氏逆転勝利という結果を導くことに国会議員が躊躇する可能性がある。石破氏支持の党員の声を無視して、国会議員が高市総裁を決めたとなれば、自民党への支持率が下がり、来たるべき総選挙で自分が不利な立場に立たされるという懸念を抱く議員が増えるからだ。

 その意味では、石破氏が党員票でどれだけ高市氏を引き離すのかがカギになりそうだ。

 先週、ある自民党の大物議員と複数の官僚OBと昼食を共にする機会があった。

 そこでもやはり、石破氏有利ではあるが、高市総裁誕生の可能性も十分にあるということが話題になった。

 興味深いのは、自民党総裁が石破氏になるか他の候補になるかで、今後の政治は全く異なるものになるだろうということで参加者の意見が一致したことだ。

 石破氏以外の候補の話を並べてみると、結局は、金融緩和は続ける、大企業支援も中小企業支援も大々的にやる、子育て支援をやる、介護・保育労働者の賃金を上げる、地方への投資を拡大する、雇用の流動化や規制改革などで生産性を上げる、そして、軍備は拡張するというようなことが並ぶ。基本的に安倍政治が標榜していたこととの違いは見えない。

 一旦決めた増税をやめるという茂木敏充氏を含め、アベノミクスの第1の矢である異次元の金融緩和と第2の矢の無責任な財政出動が主役の経済政策の継続を宣言しているようなものだ。河野太郎氏だけがかろうじて野放図な財政拡大への懸念を示したが、同氏を含め、アベノミクスへの正面からの反省の弁は誰からも聞かれなかった。

 アベノミクスの結果として、通貨価値が下がって円安と物価高が進行し、上がらないと言われていた金利も上がり始め、政府の利払い負担が拡大する可能性が高まっている。

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