唯一、アベノミクスへの反省を見せる石破氏

 このようにアベノミクスの弊害が噴き出す一方で、第3の矢として喧伝された成長戦略はいまだに成果が出ない状況だ。一方、各候補が唱える成長戦略には全く新味はなく、アベノミクスの焼き直しに過ぎない。これまで12年間近くやって失敗したのに、また同じことをやってうまくいくと考えているのだから「馬鹿につける薬はない」とはこのことである。

 そんな中で唯一違いを見せているのが石破氏だ。

 石破氏は、安全保障分野では、日米地位協定の見直し、さらには在沖縄米軍基地の共同管理という極めてハードルの高い問題を取り上げた。これまで自民党の中ではタブーとされてきた問題だ。アメリカに従属する日米同盟関係を見直したいという意欲が見て取れる。

 石破氏は、アベノミクスについて検証するのは当然のことだとも述べた。

 旧安倍派をはじめアベノミクスを信奉する議員たちの反発を買うのは得策ではないので、言い方はかなり注意深いものだったが、アベノミクスへの反省を踏まえた政策転換を打ち出そうとしていると見て良いだろう。こんなことを言えるのは石破氏だけだ。

 石破氏が主張する金融所得課税強化もアベノミクスとの決別を象徴する政策だ。土地と株さえ上がれば良いという安倍晋三・菅義偉・岸田文雄各氏の政策を根本から否定すると言っても良い。格差放置政策転換の狼煙である。案の定、他の候補からは反対の集中砲火を浴びているが石破氏は揺るがない。岸田氏が、首相就任直後、「新しい資本主義」の象徴として金融所得課税について言及したが、株が下がると慌てて撤回したのとは大違いだ。

 さらに、エネルギー政策でも、河野氏や小泉氏が脱原発から原発の新増設や建て替えまで認める完全な宗旨替えをするなど、他の全ての候補が原発推進を唱えるのに対して、石破氏だけが、再生可能エネルギーの最大限の拡大とそれによる原発依存度の低減を明言している。特に、原発のコストは再エネを上回るという当たり前のことを自民党議員としては珍しく正面から主張しているところを見ると、完全な「確信犯」であることがわかる。

 前述のランチのメンバーの間では、決選投票の組み合わせが、石破対高市になるのか、石破対小泉になるのか、あるいは予想外の小泉対高市になるのかはわからないが、新総裁が小泉氏になれば、党内政治の波に翻弄され、おそらくこれまでの政治の延長、高市氏になれば、純化された安倍政治の強力な推進になるだろうという意見で一致した。高市氏の政策は、いわば「令和の富国強兵」である。

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