登板機会に恵まれない2人の最多勝投手
ソフトバンクの石川は20年に11勝3敗、防御率2.42で最多勝、最高勝率(.786)のタイトルを獲得。3年ぶりのリーグ優勝日本一に大きく貢献した。縦に大きく割れるパワーカーブ、打者の手元で鋭く変化するカットボールが武器で、テンポよく投げ込む。今季はチーム事情で先発、救援でフル回転して13試合登板で5勝2敗、防御率2.49。今月は2試合登板で2勝0敗、防御率0.73と安定感が際立っている。石川は推定年俸1億2000万円で、人的補償を必要としないCランクであることも獲得球団の大きなメリットだ。
変則のサイド右腕から凡打の山を築く阪神・青柳は21、22年と2年連続最多勝を獲得。昨年は8勝止まりだったが、日本シリーズ第7戦・オリックス戦で宮城大弥との投げ合いを制し、38年ぶりの日本一に導いている。今季は10試合登板にとどまり、2勝3敗、防御率3.54。村上頌樹、才木浩人、大竹耕太郎、西勇輝、ビーズリー、高橋遥斗と先発陣はタレントがそろい、絶対的な存在だった青柳の立ち位置が変わってきている。
「青柳、石川はチームの先発陣が安定しているため、1、2軍を行き来してなかなかチャンスに恵まれていないが、まだまだ1軍で十分に活躍できる。登板機会を求めた時、FA移籍は選択肢の一つになるでしょう。FAではないですが、巨人で登板機会が減った西本聖さんが中日にトレード移籍して、1年目に自己最多の20勝で最多勝に輝いたケースがありました。環境を変えてよみがえった好例と言えるでしょう」(スポーツ紙遊軍記者)
ロッテの西野も抑え、先発で活躍した実績を持つ好投手だ。先発転向した昨季は8勝5敗、防御率2.69をマーク。今季も18試合登板で8勝8敗、防御率3.29と自身初の2ケタ勝利を狙える位置につけている。スライダー、フォーク、ツーシーム、カーブと多彩な変化球を操り、大崩れしない。育成枠で入団し、20年にトミー・ジョン手術を受けて1軍のマウンドから2年間遠ざかった苦労人は、実直な性格でナインの人望が厚い。今オフはFA権を行使するか、去就が注目される。