医者の言うことを黙って聞いていれば良い―患者になった時、そんな風に思ってしまいがちだ。心臓外科医・渡邊剛氏は「それは違う」と言い、セカンドオピニオンを求める姿勢が重要だと説く。同氏の著書「心を安定させる方法」(アスコム)から一部を抜粋し、世界にひとつだけの自分の体といかに向き合っていくかを考える。
【写真】演技に磨きをかけるため、様々な役柄に挑戦し続ける役者はこの人
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言葉に「血が通っているか」を見極める
医師である私が言うのも変ですが、病院は嫌なところです。
用事がなければ近づきたくないでしょうし、できれば病院に行かないといけない事態は極力避けたいと思っているはずです。
ですが、もし体調を崩してしまったら、自分が患った病状について、あるいは手術が必要な場合はどのようなことが行われ、術後にどのようになるかについて、医師から説明を受けることになります。
これはどの科においても同じかもしれませんが、医師が悪い意味で「患者に慣れてしまっている」傾向があるように感じます。診察する医師にとっては見慣れた病気で、その患者さんは大勢の患者の一人にすぎないのかもしれません。
しかし、その患者さんにとっては、自分の身に突如としておきた異変ですから、不安になって当たり前です。
「自分の病状、治療法、手術の内容をとことん知りたい」
そう患者さんが思うのは、当然のこと。しっかりと説明を受け、治療、手術を受けるべきです。また逆に患者さんの意向も、医師はしっかり聞くべきでしょう。
医者の言うことを黙って聞いていればいい――それは違います。
医療は、患者さんと医師の信頼関係をなくして成り立たないのです。
もし納得がいかなければ、「セカンドオピニオン」「サードオピニオン」を患者さんは求めることができます。これは近年、一般化してきているのですが、こんな悲しい話をしょっちゅう耳にします。
「セカンドオピニオンを聞きたい」。そう申し出た患者さんに対して「じゃあ、もううちでは診ない!」と医師が怒り出したというのです。