でも、そんな狭量な医師の言うことなんて、聞く必要はありません。

 医者は星の数ほどいますが、世界にひとつだけの、大切なあなたの体のことなのですから、多様な診断や治療法を求めることも当然の権利です。

 医師に限らず、決意して打ち明けた不安に理解する姿勢を示さない人とは、距離を置くことをおすすめします。「人はいつかわかりあえる」という考えがあります。

 たしかに、多くの時間をかけて丁寧にコミュニケーションを続けていけば、いつかそうなれると私も信じたい。でも、いつまでたっても平行線の人間関係も、実際に存在します。

 とりわけ病気に限っては、時間との勝負です。みなさんの抱えている不安を取り除かずに、淡々と流れ作業のように体を診る医師に割いている時間など、一秒たりともないのです。
 

心を曇らせてはいけない

 人と信頼関係を築くときに、私が大事にしていることとは何か。

 それは、「真摯であれ」ということです。

 まず、しっかりと患者さんの話を聞く。この基本ができていない医師が、とても多いと感じます。「先生」と呼ばれることで、勘違いしてしまっているのかもしれません。

 ときには、患者さんは自分の言うことを聞くものだと思い込み、横柄な態度で接している医師もいます。医師と患者の間に、上下関係などありません。

 私は、決して人付き合いのいいタイプではないと思います。必要以上に相手に気を遣って馴れ合うことはしませんし、お酒を飲むこともほとんどありません。時間があるなら、自分が没頭できることに割きたいと考えます。

 それでも、人に対しては誠実に接したいと思っていますし、いままでもそうしてきたつもりです。群れて生きる必要性を感じたことはありませんが、出会った人に対しては、誠実に謙虚に、まっすぐに向き合いたい。

 これは、「医師として」というよりも、「人として」至極当然のことだと思います。

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