東京・二子玉川ライズ スタジオ & ホールで開催中の「鈴木康広展 ただ今、発見しています。」の会場で。「空気の人」「まばたきの葉」など約50点を展示。鈴木ならではの「発見」に満ちた空間が広がる(写真/葛西亜理沙)

ポエティックで美しい 日本の風土を背負う表現者

 東京造形大の卒業制作展を見に行き、鈴木に声をかけた人物がいる。森田菜絵。当時、NHKで放映されていた番組「デジタル・スタジアム」のADを務めていた。番組は、デジタルツールを使ったクリエイターを発掘し、育成することをコンセプトとしていた。鈴木の卒業制作「inter-reflection(椅子の反映)」は、5本の弧の上で回転するミニチュアの椅子の影が、五線譜の上で踊っているように見える。それを撮影した映像もその場で流していた。森田は語る。

「ポエティックで美しいと思いました。作品やパラパラ漫画を見せてもらい、世界に対し不思議に思ったり、身の回りのモノに驚いたりして、それを端的な形や言葉に表していく感性が素晴らしい。手先が器用で、何でも自分でつくってしまう」

 森田がディレクターに昇格して最初の回、鈴木は「遊具の透視法」という映像インスタレーション作品を提出した。当時、鈴木が暮らしていた東京・松原の赤松公園で、円形の遊具「グローブジャングル」で遊ぶ子どもたちをベンチに座って眺めていた瞬間、子どもたちの影が地球の大陸に見え始めた。昼間、遊ぶ子どもたちを撮影し、夜、回転する遊具の残像をスクリーンに見立て、投影する案を思いついたのだった。森田は振り返る。

「今日の昼のことなのに、子どもの頃のことを思い出すような、懐かしい気持ちになりました」

「遊具の透視法」は最優秀賞に輝き、その年の年間最優秀賞も獲得。「グローブジャングルプロジェクト」として、全国・海外へも展開した。各国のキュレーターの目にとまり、フランス、オランダでも展示が実現した。

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