嘉手納基地近くでは相次ぐ性暴力を非難する「フラワーデモ」が開かれるなど、怒りの声は高まっている=2024年6月28日

沖縄県と政府の関係悪化、情報共有に問題が

 だが、国際政治学が専門の沖縄国際大学の野添文彬(ふみあき)准教授は、被害者のプライバシー保護は前提だとした上で、「恣意的に行われたと考えざるを得ない」と批判する。

「4月に日米首脳会談が開催されましたが、岸田(文雄)首相は国賓待遇で歓待され議会でも演説することになっていました。岸田首相にとっては晴れの舞台。そうした中で、性被害の問題を持ち出してアメリカ側の機嫌を損ねたくなかったのだと思えてなりません」

 また、6月16日には沖縄県議会議員選挙があったが、選挙前に米軍による性犯罪が表沙汰になれば基地問題が争点となり、米軍普天間基地の名護市辺野古移設に反対する「革新側」に有利になる可能性を避けたかったのではないか、という。

「もっと言えば、辺野古移設の問題を巡り、沖縄県と政府との関係がこれまでになく悪化している中、情報共有ができなくなっているのではないかと思います」(野添准教授)

 国内の米軍基地の約70%が集中する沖縄では、米兵による性犯罪が繰り返されてきた。

「沖縄戦で米軍が沖縄に上陸した1945年から2021年までの76年間で、わかっているだけで少なくとも950人の女性が、米兵による性被害に遭っています」

 こう語るのは、沖縄女性史研究家で「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」メンバーの宮城(みやぎ)晴美さんだ。

 宮城さんたちは95年の少女暴行事件を受け、「性暴力の実態を明らかにしたい」という思いから地方紙や米軍資料、書籍などあらゆる記録を掘り起こし、証言を集め、冊子『沖縄・米兵による女性への性犯罪』をつくった。初版は96年。改訂を続け、最新の第13版が昨年完成した。

 宮城さんによれば、沖縄が日本に復帰した72年以前、琉球警察は米兵による事件を「発生」と「検挙」の両方を発表していた。だが復帰以降、県警になると発表は「検挙」件数と人員数となったという。950件は氷山の一角で実態はこの何倍もの被害があったはずで、発表の仕方を変えたのは警察の米軍への「配慮」以外の何物でもないと見る。そしてこう言う。

「沖縄で性犯罪が起きるのは、行きつくところは、日米地位協定にあると思います」

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