「07会計年度だけでも、計861人の元犯罪者が陸軍と海兵隊に入隊しています。また、14年に米陸軍と米国立精神衛生研究所が発表した調査結果によると、入隊したばかりの米兵の25%にADHD(注意欠陥・多動性障害)や、突然怒りを爆発させる間欠性爆発性障害などの症状があったといいます」(山本准教授)
無論、そういった症状があるから犯罪者になるわけではない。ただ16年に、うるま市で米軍属の男が20歳の女性を暴行し殺害した事件では、男に複数の症状があったことがわかっている。子どもの頃からADHDと「向社会的、非攻撃的な素行障害」の治療を受け、高校生の頃から「強姦殺人願望」があった。海兵隊に志願する際、志望動機を「人が殺せるから」と答え、採用された。こうした罪を犯すリスクの高い米兵が沖縄に一定程度いる米軍の構造的な問題があると、山本准教授は言う。
「2点目の米軍の住環境の問題は米軍関係者と地元住民との居住地の近さです。沖縄では、米兵は階級が高く結婚をし、長期滞在していれば基地の外に住むことができます。沖縄の米兵は20代前半で安易に結婚することが多いという研究結果がありますが、基地の外に住みたいというのが大きな理由です」
基地負担の軽減が必要、国内法を米軍にも適用
昨年12月の事件を起こした米兵の男は、結婚をして基地の外に住んでいた。犯行前日に妻と口論してむしゃくしゃし、気晴らしのため車で公園に来ていて、そこにいた少女に声をかけ自宅に連れて帰り行為に及んだという。
「それぐらい精神的に未熟な人が、結婚しているという理由で基地の外に簡単に住めてしまう現状が問題です」
この二つの要因に加え、アルコールも関係していると山本准教授は言う。
「国防総省の調査結果では、性犯罪を起こした米兵の約6割が事前にアルコールかドラッグを摂取しています。基地内では、アルコールは厳しく取り締まられて飲むことはできませんが、一旦基地の外に出れば、自由に飲むことができます」