AERA 2024年8月26日号より

日米地位協定の問題「俺たちは捕まらない」

 1960年に結ばれた日米地位協定は、「公務中」の事件は日本側に容疑者の身柄拘束権も裁判権もない。「公務外」の事件では日本側の裁判権は優先されるが、米側に身柄がある場合、起訴されるまで米側が身柄を拘束すると定めている。

 95年の事件では、米側が日米地位協定を根拠に、3人の容疑者の身柄引き渡しを拒否。起訴までの26日間、日本の警察は逮捕できなかった。昨年12月の事件の被告の兵士は起訴後に保釈され、引き続き米軍の管理下に置かれたまま身柄は勾留されていない。性犯罪では極めて異例だ。

「日米地位協定は日本の憲法の上にあります。米兵の犯罪は憲法で裁くことができず、地位協定という枠組みの中でしか日本の法律は適用されません。最近発覚した米兵による性犯罪のほとんどが不起訴で、過去に『俺たちはレイプをしても捕まらない』と言う米兵もいたといいます」(宮城さん)

 沖縄県警によれば、1972年から2023年の51年間で、米軍構成員など(米軍人、軍属、その家族)の刑法犯の検挙件数は計6235件に上る。摘発は増加傾向にあり、昨年は72件と4年連続で増え、過去20年間で最悪だった。

 犯罪が増え続ける背景には何があるのか。在日米軍に詳しい、琉球大学の山本章子(あきこ)准教授は(1)米軍の持つ構造的な問題、(2)米軍の住環境──の2点があると指摘する。

「米国では、ベトナム戦争後に徴兵制から志願制になり、米兵の数は慢性的に不足しています。その穴埋めをするため、犯罪歴や精神疾患など問題を抱えた人間もリクルートしていきます」

 とりわけ兵士不足が悪化したのは、01年9月11日の同時多発テロ以降だ。米国は「テロとの戦い」を宣言し、アフガニスタンやイラク・シリアなどで軍事行動を展開し、IS(イスラム国)掃討と戦線を拡大していった。兵士不足が深刻化する中、米国は強盗やレイプなど犯罪歴のある人物は、入隊すれば犯罪歴を免責する制度をつくった。その結果、犯罪歴を消したい人間が軍隊に入ってくるようになった、という。

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米軍にも国内法の適用を