7月18日、精神科医・藤野智哉さんは、著書『「そのままの自分」を生きてみる』2万部突破記念トークイベントに、「雑談の人」の桜林直子さんとともに登壇。「自分らしさ」「自分を大切にする」などをテーマにトークを展開しました。SNSで人気の精神科医とポッドキャストでおなじみの「雑談の人」の初対談を前後編に分けてお届けします。トークの化学反応をお楽しみください。(※この記事はトークイベントの一部内容を編集・構成したものです)

【写真の続き】「そのままの自分」を生きてみる SNSで人気のイケメン精神科医×ポッドキャストでおなじみの「雑談の人」が初対談!

大盛況だった東京・六本木の蔦屋書店で開かれたトークイベント(photo ディスカヴァー編集部)

「自分を変えたい」と思う前にやることがある 

藤野智哉(以下、藤野):はじめまして。精神科医の藤野智哉と申します。

桜林直子(以下、桜林):はじめまして。桜林直子と申します。

「雑談の人」という肩書で雑談をするというお仕事をしています。1人につき1回90分、全5回の雑談をするサービス(有償)をしたり、「となりの雑談」というポッドキャストのパーソナリティーなどをやっています。よろしくお願いいたします。

藤野:この「雑談の人」ってどういうことなんだろう、雑談ってどんな話をしてるのだろうか、などを今日は聞きたいなあと思っていました。よろしくお願いします。

桜林:ご著書(『「そのままの自分」を生きてみる』/ディスカヴァー・トゥエンティワン)を読ませていただきました。この本には、「自分を変えたい」「変わりたい」と思う人がいて、変わりたい気持ちは素晴らしいことだけど、その前にやることあるよね、もうちょっとその手前の段階を見てみようよ、ということが書かれています。これは私が普段、雑談をする中でもすごくよくあることなので、「わかる、わかる!」と思いながら読みました。

藤野:「変わりたい」にもいろんな種類がありますが、ネガティブな「変わりたい」、つまり、「自分のこういうところが良くないから変わりたい」のようにおっしゃる人はすごく多いですね。ただそういう人は、なんとなくうまくいかないから変わりたいけれど、自分のどこが悪くて変えたい部分で、逆にどこは変わらなくていい部分なのかをあまり具体的に考えてはいない人が多いかもしれません。

桜林:「否定が先」みたいな感じですかね。

藤野:はい。否定から入ってもいいのですが、結局、ポジティブな感情をもつ「変わりたい」にどうやったらもっていけるかなんだと思います。だから、自己否定ではない、ポジティブな「変わりたい」にもっていけるかどうか、ちょっと立ち止まって見てみようよ、みたいなことがこの本のテーマですかね。

 結局、こういう啓発本は「変わろう」と変化をうながすことが多くて、なんとなく背中を押してくれるけれども、それを読んでも結局変わらなかった人も多いと思うんですよね。だから、その手前の段階の本を作れたらなと。

大盛況だった東京・六本木の蔦屋書店で開かれたトークイベント(photo ディスカヴァー編集部)
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桜林:その手前の段階、めっちゃありますよね。私は20代の自分の感覚でこの本を読んでみたんですよ。今の自分に必要な本というよりは、やっぱりかつての自分が必要だった本だなと思いました。その20代の自分に言わせると、やっぱり「変わりたい」は漠然としていて、「今のままじゃダメだ」「このままだとまずそうだぞ」ってことはなんとなくわかっているのですが、何をすればいいかはわからない。

 この本が20代の私の目の前にあったとして、中身をパラパラと読んでこういうことが書いてありそう、とは理解できる。でも「みんなはそれでできるかもしれないけど、自分にはできないかもしれない」とか「これができるのは恵まれた人で、私は不幸でできない」なんていう、なんか謎の負の思い込みみたいなものが出てきて、ちゃんと読めないということがあって。でもこの本には「いつか変わるタイミングが来るからそのままでいいよ」ということも書かれていたんですけど、ほんとにそうですよね。

藤野:「タイミングは今じゃない」を、もう「無し」にしてしまう人ってすごく多いんですよね。タイミングが今じゃないだけなのに、もうずっとできないと思って、捨ててしまう人が多いんです。けれども、後から使えることやできることっていっぱいあるもの。可能性を狭めないっていうことはめちゃくちゃ大事だと思いますね。

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自分の中にある「べき」に気づく