トラベルヘルパーが寄り添うことで娘も父(当時93歳)との旅を楽しめる(写真:SPIあ・える倶楽部提供)
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 コロナ禍で数年間、遠出や旅行を控えているうちに、親がすっかり老け込んだ、という人もいるだろう。でも、要介護状態だからといってあきらめるべからず。施設のバリアフリー化も進み、頼れる助っ人もいる。AERA 2024年8月5日号より。

【写真】トラベルヘルパーに支えられて温泉を楽しむ男性

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〈コロナも落ち着いたし、ママを旅行に連れていかない? 最後の旅行になるかもよ〉

 都内に暮らす女性(55)のもとに、姉(58)からLINEが届いた。姉の職場で「老親のために」と、旅行休みを取る同僚が続いたのだという。母親は当時90歳(要支援2)。9年前に脳梗塞を起こして右半身にまひが残ったが、都内の一軒家に一人で暮らしている。

 母親に希望を聞いて行き先を沖縄に決めると、「沖縄なら」と娘二人も乗ってきて、3世代5人で2泊3日の沖縄旅行に。

「ホテルのビュッフェで私たちが母の食べたいものをとってあげると、『おいし、おいし』と喜んでくれました」(女性)

 なるべく歩かずにすむようにと、道中はタクシーを利用した。

「ドライバーさんは、途中、トイレに行きたそうな母の様子に気づき、車を寄せて近くの公園に連れていってくれたり、夕陽がキレイなタイミングでビーチを案内してくれたりして感謝です。海をバックに写真が撮れて記念にもなりました」(同)

入浴介助受けて温泉に

 帰りの那覇空港。孫たちから「また行こうね」と声をかけられると、「行こう! 行こう!」と母は即答。そのあとに、

「まだ、生きてていいの?」

 本音がこぼれた。

「母は心のどこかで、生きていることで周囲に迷惑をかけていると感じていたのだと思います。でも、私が『うん』と返すと満面の笑みで『頑張りまぁす』と言ってくれた。その時、じんわりと温かい気持ちになりました。旅行は母にとって生きる力になったのだと思います」(女性)

 昨年5月に新型コロナウイルス感染症が「5類」となり、厳しい感染対策が解除された。親を旅行に連れていきたいと思っても、この数年の間に親に身体介助が必要となったり、認知症が進んだりして、不安を感じている人は少なくない。そんなときに心強い味方がいる。「トラベルヘルパー」、外出支援専門員だ。

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