AERA 2024年8月5日号より

 若者の消費・メディア行動研究及びマーケティングに詳しい、芝浦工業大学の原田曜平教授は、こう指摘する。

「今では女性が就職で有利になっている業界もあります。例えば、かつては社員の8~9割は男性だった大手広告代理店で、今年の内定者の6割が女性だったところもあります。そもそも、広告業界は化粧品など女性向けの商品を取り扱っているため、理にはかなっている。ただ、日本全国で見れば多くの中小企業は『古い体質のおじさん』だらけで、まだ女性にとっては不利な社会だと思います」

 なぜ、状況は変わらないのか。原田教授は、こう続ける。

「日本全体も企業も高齢化しているので中高年の価値観がマジョリティーになりやすい。絶好調でなくても、現状維持あるいは、徐々に落ちている業界・会社では、一気に新しい価値観や制度を取り入れる方向に向かうよりも、自分が退職するまで会社があればいい、という考えが強いのでは。色々なものを変えてしまうと、中高年には大変負担になってしまうし、場合によっては自分の経験値がほぼ生かされなくなって、存在意義や自尊心がなくなってしまうことに繋がるからでしょう」

結局「子ども」求められ

 さらに、取材をしていると、若者たちもまた、意外にも伝統的な社会規範に縛られているケースが多いことに気づかされた。

 前出のスマホゲームのメーカー勤務の女性は、次のように語る。

「『夫婦別姓』とSNSで主張していた友達も、今は法律婚をして子どもを産んでいます。従来、男女問わず、アイデンティティーは仕事や趣味などたくさんあるはずです。しかし、女性は結婚して出産した途端に『子どもがすべて』になります。わたしはそれが怖いのです」

 幼少期から必死で勉強したのは、何のためだったのか。時代は進んでいるはずなのに、家族や社会に求められるのは結局「子ども」であることに戸惑う女性は多い。冒頭のCM制作会社の女性は語る。

「結局、大卒はコスパが悪いのです。わたしは奨学金を借りてまで、大学に進学しましたが、卒業後は年収の低さに日々、悩まされています。さらに親からは『女性としての喜びと、長女としての喜び、どちらも期待している』という圧力をかけられています。いい会社で働くことを求められている一方で、『女性は子どもを産まないと幸せになれない』ということですね。そんなとき、『だったら、なんのために勉強させて、大学に行かせたのよ?』と思ってしまいます」

 ただ、その大学に入っていなければ、生活水準がもっと下がる可能性はあったとして、こう続ける。

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