本連載の書籍化第5弾!『鴻上尚史のおっとどっこいほがらか人生相談』(朝日新聞出版)

【鴻上さんの答え】

 りりかさん。少し混乱していますか? 相談文の冒頭で、いきなり、三つの相談がいっぺんに出てきますね。

 「人や周りに対してうまく興味を持てない」ということと、「私は昔から感情表現が苦手」ということと、「自分の考えがなくて(略)うまく答えられません」ということですね。

 この三つは、似ているようでも、全然、違うと思います。

 りりかさんは、普段は何をしていますか?「人や周りに対してうまく興味を持てな」くて、どうやって時間をつぶしているのでしょうか?一方通行の人生相談をやっていて、とてももどかしく感じるのは、こういう時です。

 普段、何をしているのか。その答えで、僕のアドバイスもずいぶん変わってくるからです。

 「人や周りに興味を持てなくて仕事している以外は、ずーっとボーとしている」のでしょうか。それだとかなりのやっかいな事態ですが、高校生の時に僕の本と出会ったのですから、一日中、ボーッとしているわけではないと思います。

 では、「なんとなく生きている」という状態でしょうか。好きな本もマンガもアニメもドラマもとくになく、押しもいなくて、好きな食べ物も何もない、という状況でしょうか。

 これも、そんなことはないんじゃないかと思います。それなりに、りりかさんにも好きなものがあるんじゃないでしょうか。もちろん、「ものすごく好きだ!」みたいな熱量はなくても、「なんとなくこれが好き」というものはあるんじゃないかと思います。

 「人に興味がない」と書かれていますが、人間全部ですか。自分以外はすべての人類に興味はないですか?

 そんなこともないでしょう。「波長が合う人は別として、人とそもそも何を話したらいいかわかりません」と、りりかさんは書いています。つまり、人間全部に興味がないわけではなく、「波長が合う人」がいるということですね。

 「波長が合う人」には興味があって、話すことがあるんじゃないですか?

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