ポテトサラダをつくるなら、ジャガイモは皮付きのままゆでて、熱いうちに皮をむいてつぶす――。料理の本には、こう書いてある。でも、熱いうちにつぶすのって、つぶすこちらも熱いし暑い。特に夏は。少し冷めてからではダメなのだろうか?
料理研究家でありシェフでもある川上文代さんが出したばかりの『おいしさの秘密を大解剖!調理科学でひも解く 基本の料理』は、基本の料理のレシピはもちろん、美味しく仕上げるための「コツ」、そして「熱いうちにつぶす」のような「常識」への疑問について、科学的な根拠をもって答える本だ。
例えば「熱いうちにつぶす」の根拠は、「じゃがいもは加熱によって細胞同士をつなぐ接着剤のような役割を持つペクチンがやわらかくなり、冷めると再び細胞同士がくっついてかたくなるので、熱いうちに潰すのがポイント」と説明されている。そして、これに続く一文はさらに目からウロコだった。「マヨネーズは熱によって分離するので、粗熱を取ってから加えて」。
熱いうちにつぶしたら、その勢いで、まだ熱いじゃがいもにマヨネーズを混ぜていたような……。マカロニサラダの項にも、「マヨネーズは卵黄が乳化剤として働きますが、熱が加わると乳化力が低下して分離しやすくなるため、全体が冷めてから加えて和える」と説明されている。
本にはほかにも、多くの「コツ」が示されているが、ここでは、川上さんが「料理で最も重要」とする火加減、そして水加減についての説明を引用して紹介したい。「強火」と言われて、コンロのつまみを全開にしていたり、「ひたひた」がイメージできなかったりするなら、読んでみてほしい。
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水加減のこと
おいしく仕上げるための大切な要素に、水加減があります。特に、煮物や煮込み料理などのレシピで、「たっぷり」「かぶるぐらい」「ひたひた」という表現をよく見るのではないでしょうか。これは、食材に対する水の適正量を表しています。水加減を誤り、煮崩れてしまったり、均一に火が通らなかったりするのを防ぐための目安です。