「好景気」のはずなのに悪くなる市民生活

 企業業績が良くなったというが、輸出企業などが円安効果で直接的に潤っている他に、今では、「値上げ」で大幅増益という企業が続出している。もちろん、原材料高や人件費増分以上に値上げするから大増益になっているわけだ。

 その結果、33年ぶりの高い賃上げ率などと騒がれた春闘を経てもなお、実質賃金は26カ月連続マイナスで市民の購買力は低下を続ける。実質消費支出もマイナス基調が続き、市民が以前よりも少額しか消費できないことを示している。

 史上最高の企業利益、33年ぶりの賃金上昇率、バブル後最高値更新を続ける株価、地方を含めた地価の大幅上昇という「好景気」の中で、どうして市民生活だけは悪くなるのか。多くの人々は、肌感覚でそれを理不尽だと感じるようになってきた。そして、その原因が、日本の経済の仕組みやそれを形成してきた政治の構造にあるのではないかと疑っている。

 もちろん、それは自民党政権への批判につながっているのだが、この理不尽さを正してくれるのが立憲民主党なのかというと、これまた、否定的な人が多い。自民の支持率がこれほど下がっているのに立憲の支持率はそれほど上がらない現象がずっと続いているのはその証である。

 立憲は、前述の「理不尽さ」を正すための政策として、分配政策に重点を置くが、そのことが逆に分配の利益を享受する取り残された人々さえ不安に陥れる効果を持つことに気づいていない。分配すれば経済が良くなると言われても、立憲や共産党のコアな支持者以外はほとんどこれを信じない。そんな安易な政策を掲げることの方が胡散臭いと思っているのだ。

 だから、裏金批判をして若者支援などの分配政策ばかりを強調した蓮舫前参議院議員は都知事選で大敗した。旧民主党の幹部であった蓮舫氏を旧民主党転落のA級戦犯である野田佳彦元首相を前面に出して戦ったのも驚くべき戦略ミスだ。

暮らしとモノ班 for promotion
いよいよ「Amazonプライムデー」開始!おすすめ商品やセールで得するために知っておきたいこと一挙紹介
次のページ
働いても裕福になれない日本