今年5月、松本城の城下町にあるカフェに初めて行ったときのこと。日本語のメニューと、外国語表記のメニューで料金が違った。日本語を話せて、日本に住んでいるオルブライトさんは、日本語のメニューで店員に注文をしたが、外国人表記のメニューを提示されたという。

 「自分は日本に住んでいる」と日本語で伝えたが、店員の反応はなぜか「NO(ノー)!」。何を日本で言っても 「NO」が続き、最後はパスポートや住民票といった証明できるものはないのか聞かれたという。もちろん携帯しているわけではないので、あきらめてしぶしぶ外国人表記のメニューで頼んだ。抹茶と和菓子のセットで、日本人メニューでは600円+税だったが、外国人メニューでは990円+税だった。

 外国人だけの価格を設定している理由について店舗に取材したところ、「店の方針なので、理由を話すことはありません」との回答だった。

オルブライトさんが頼んだお茶のセット。外国人は日本人より300円ほど高かった(本人提供)

専門家「設定した価格でのコスト回収が難しくなってきている」

 二重価格の動きについて、文教大学国際学部国際観光学科の専任講師を務める中井治郎氏は、「二重価格はすでに世界で行われており、全く珍しいものではありません」と指摘する。

 カンボジアのアンコールワットやインドのタージマハル、エジプトのピラミッドなど世界的な観光地では、すでに二重価格が設定されているといい、

 「日本は、アメリカの人気旅行誌『コンデナスト・トラベラー』が選ぶ『世界で最も魅力的な国』ランキングで1位になるなど世界的な観光地です。にもかかわらず、地元住民と同じ価格だったこと自体、地域に対してある種の負担を強いてきたと考えることもできます。世界遺産である姫路城が値上げをするのは、オーバーツーリズムというよりは、文化財を守る、という意味合いが強いのかと考えます」

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二重価格は「誰」が対象なのか