ちなみに上位指名で獲得した4人の選手を見ても、その年の野手目玉と言える存在だったのは蛭間だけである。そういった方針の裏にあると考えられるのが野手の育成への“過信”ではないだろうか。西武では近年までドラフト3位で獲得した野手が当たるという定説があり、浅村栄斗(2008年3位・現楽天)、秋山翔吾(2010年3位・現広島)、金子侑司(2012年3位)、外崎修汰(2014年3位)、源田壮亮(2016年3位)が主力へと成長している。こういった成功事例が続いたことによって、わざわざ上位指名の貴重な枠を使わずとも、そこまで評価の高くない野手を3位以下で指名して育てれば、強力な野手陣を作れると考えたとしても不思議はない。

 ただ、当たり前のことではあるが、成功する確率の最も高いのは1位指名の選手である。改めて西武が過去10年間に指名してきた野手を見ても、4位以下で完全な主力に定着した選手は1人もいない。もちろん高い期待を受けて1位指名で入団した野手がなかなかレギュラーに定着できないという例もあるが、確率論から考えても野手を軽視してきた分が、現在の得点力不足に繋がっていると言えるだろう。

 もうひとつ大きいのは独自路線が機能していない点ではないだろうか。西武と言えば他の球団があまり注目していないチーム、特に地方大学の選手を積極的に獲得して主力選手にしている例が目立つ。その最大の成功例が北東北大学リーグに所属している富士大であり、山川、外崎以外にも多和田真三郎(2015年1位)が最多勝を獲得するなど活躍している。それ以前では細川亨(2001年自由枠・青森大)、岸孝之(2006年希望枠・東北学院大)なども成功例と言えるだろう。

 ただ過去10年でその年の目玉だった隅田知一郎(2021年1位・西日本工大)は期待通りの活躍を見せているが、それ以外で完全に主力と呼べる選手は外崎だけ。また過去10年で地方大学から上位で指名した佐野泰雄(2014年2位・平成国際大)、川越誠司(2015年2位・北海学園大・現中日)、中塚駿太(2016年2位・白鴎大)は既に球団を去っている。

次のページ 今後のドラフト戦略が好転のカギ