第1志望は国立大学、第2志望が私立大学とする受験生は少なくない。歴史、伝統、ブランド力によるものだが、学費の安さも大きな要因だ。
豊田工業大の「国公立大学並み」というフレーズは受験生にとってなかなか魅力的だ。生来、国立大学の学費が値上がって、私立大学と大差がなくなったらどうだろうか。大学選びマップは変わるかもしれない。
だが、その前に私立大学、国立大学は考えてほしい。学費の値上げは家計を大きく圧迫する。
6月上旬、東京大で「学費値上げに反対する全学緊急集会」が開催され、サテライト会場と合わせておよそ400人が集まった。スピーチした学生は生活の苦しさを訴えていた。東京大、早慶など大きな大学の学費値上げは影響力が大きい。他大学にも波及する恐れがある。
現在、地域によって高校教育の無償化が実現している。これには経済的に困窮する家庭を救済するという側面がある。ありがたい話だ。
その一方で大学は正反対の方向に進もうとしている。学費値上げは学ぶ意欲がある、能力も高い学生に対して門戸を閉ざしかねない。
学費値上げを踏みとどまってほしい。いや、多くの人たちに学問を諦めさせないため、無償化に近づくぐらい、学費を下げるような教育政策を、国は打ち出してほしい。
(文/教育ジャーナリスト・小林哲夫)