AERA 2024年6月24日号より

周囲の不公平感に注意

 具体的には、部下の意向を引き出す対話、事情や意欲に合った業務アサインが求められるという。子育てといった特定の事情だけに配慮しているように映ると、本人がためらいを覚えるだけでなく、周囲が不公平感を抱く場合もあるので要注意だ。

先の女性は「働き方のギアチェンジがスムーズに進んだのは、上司の理解と信頼関係があってこそ」だと強調する。「週1回、半日出勤」の条件で働き始めた頃、同じ曜日に出勤すると決めた途端、その曜日に限って子どもが熱を出す、という事態に直面した。この際、子育て経験のある直属の上司は「大丈夫、大丈夫、そういう時期だから」と気まずくならないよう配慮してくれたという。日頃から職場で話しやすい雰囲気があり、女性も折に触れて「今の仕事が好きで、子どもが手を離れるようになればもっと働きたい」という意思を上司に伝えていた。このため、勤務時間や業務量が増えるタイミングも自分の意思に沿うものだったという。

 とはいえ、子育てに関する話題は私生活の領域に入るため、上司の側から「聞く姿勢」を見せてもらえないと話しにくい。部下の側は「甘えと思われたらどうしよう」「評価が下がったらどうしよう」といろいろ考えてしまう。コミュニケーションがとりにくい上司だと、真意が伝わらず不満が増したり、そもそも話してもムダと思ったり、打ち明けた時に自分に不利益な解決の仕方を提示されるのではないかと疑心暗鬼になったりもする。だからこそ、上司に求めるのは「話しやすさ」と「信頼関係」だと女性は言う。

「子どもの成長に応じて働き方をギアチェンジしていく女性にうまく対応し、長く働ける環境を整えられれば、介護病気でフルタイム勤務できない人にも応用できるはずです。やる気のある人のはしごを外すのではなく、どうすれば一緒に登れるか知恵を出し合えるよう、企業はチャンスだと思って取り組んでもらいたい」

 上司は部下本人の子育ての状況や価値観を丁寧にフォローし続けなければならないが、それは企業がより多様な人材を得る機会の拡大にもつながる、というわけだ。

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