一方、40代の男性管理職からはこんな本音も聞かれる。
「女性の部下は男性に比べて多様で、仕事に対するスタンスやタイプに応じて一人ひとり丁寧な対応が必要と感じます。でも、女性は裏でのネットワークが速く、深いため、すぐに悪い噂が広がっていく気もします。自分が受けていないパワハラなども感情移入してしまいがちな面も否めません」
男性が勤める会社では以前、若手の女性社員が相次いで退職した時期があったという。
「その際、若手社員が飲食店などに集まって、会社や上司の欠点などを話し合う場があると聞きました。ここに参加していたとされる女性社員たちが、くしの歯が欠けるように辞めていったのを覚えています」
この問題、どう克服すればいいのだろう。
「OBN」から脱却を
大島さんは「オールド・ボーイズ・ネットワーク(OBN)」の企業文化からの脱却が必要と指摘する。終身雇用や年功序列が続く企業では、同じような成功体験を持つ男性が役職者の多数を占める場合が少なくない。その場合、「OBN」が明文化されていない約束事や仕事の進め方、暗黙の文化を形成していないか検証が必要という。女性や若手が上司の知らないところで情報や思いを共有し合っている場合、管理職層やOBNによって情報へのアクセスを阻まれ、そこで物事が決まっていると感じている可能性があるからだ。
「情報共有の範囲、意思決定や仕事の進め方に無意識のバイアスや排他性がないか、既存の慣習にとらわれずに振り返ることが重要です。それは、あらゆる人が自身の声に耳を傾けてもらえる、思いを上司に伝える意味があると感じられる職場運営、上司と部下の信頼関係の構築につながります」(大島さん)
OBNの見直し、一人一人に応じたコミュニケーションとマネジメント。「バリキャリ」「ゆるキャリ」に加えて「フルキャリ」も出現した今、管理職に求められるスキルは増える一方だ。
「管理職を支える仕組みも必要です。部署を超えて管理職同士で悩みや取り組みを共有し合う機会を定期的に設けるなどあります。また、求められることが増している管理職の役割の見直し、分担や権限移譲を行い、管理職がコミュニケーションやマネジメントに注力できるようにすることも考えられます」(大島さん)
時には息抜きしつつ、部下との信頼関係構築に向かいたい。(編集部・渡辺豪)
※AERA 2024年6月24日号より抜粋