フクイラプトル制作の際に描いたラフスケッチ。安全対策で内部に組み込む鉄骨もスケッチをもとに発注する。詳細な設計図は用意せず、試行錯誤しながら制作する(写真:山本倫子)

 三井のスタイルは独特だ。世界的にはコンピューター上の製図ツールで設計図をつくるビルダーが多いというが、三井は大型作品でもラフスケッチ程度しか用意しない。その分、イメージを膨らませる作業を大切にしているという。資料写真や現地取材、建物なら設計者の思想まで調べ倒す。フクイラプトルのときは動物園に通い、肉食動物の筋肉の付き方を研究した。下調べをもとにイメージを膨らませ、手を動かして試行錯誤していく。

「設計図を描いても、途中で『ここはこうしたい』とか、『こっちの方がおもしろい』って思いつくことが多いんです。イメージを膨らませつつまずは手を動かして、少しずつ修正しながらつくっていく方が性に合っているかな」

 自身も長くレゴ作品をつくってきたビルダーであり、5年前からアシスタントを務める山本洋平(35)は、三井の作品づくりをこう表現する。

「対象の形を捉え、ブロックに置き換える再現性にいつも驚きます。誰が見てもすごい作品を私よりも速いスピードで組み上げるので、なぜこんなふうにつくれるんだろうと、いつも思います」

 三井は1987年、兵庫県明石市で生まれた。翌年、家のすぐ近くで大工事が始まる。明石海峡大橋だ。10年後の竣工(しゅんこう)まで、少しずつでき上がっていく大吊り橋を眼前に見ながら三井は成長する。

「大きな構造物ができていく様子が、子ども心におもしろかった。よくベランダから眺めていました。いま大型作品づくりが好きなのも、明石海峡大橋の工事を見て育ったからかもしれません」

 創造性が育まれたのは幼いころの「遊び」からだろうか。家には、遊び道具として大量の画用紙と鉛筆、セロハンテープ、はさみが用意してあったという。両親は、三井と3歳上の兄にそれを自由に使わせた。父の紀一郎(70)はこう懐かしむ。

「遊ぶにはたくさんあったほうがいいだろうって、山のように用意していたんです。家じゅう、いつも足の踏み場がありませんでした。淳平と兄は、気がついたら自分たちで遊びを考えていてね。淳平の全身に兄が画用紙を貼って、淳平をロボットに『改造』して二人で大笑いしていたり」

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