総制作時間は600時間。引き渡し後に寂しさはない。「思ったものをつくって喜んでもらえる。満足です」(写真:山本倫子)
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 レゴ認定プロビルダー、三井淳平。多くの人が子ども時代に遊んだことがあるレゴ ブロック。日本でただ一人の「レゴ認定プロビルダー」、三井淳平は橋や建物などの大型作品から繊細な絵画やジオラマまで、その表現で人を驚かせ、楽しませる作品を次々に生み出す。子どもの頃から工作やレゴ ブロックを楽しみ続けてきた。そのワクワク感や情熱を抱いたまま、自由で無限な世界を体現している

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 足早に通り過ぎようとした3人組の女性が、思わず立ち止まって歓声を上げる。母親に連れられた5歳の男の子はテープパーテーションから身を乗り出し、食い入るように見つめている。金曜日のお昼前、喧騒(けんそう)と共に大勢の人が行き交うJR福井駅のコンコース内にあって、その一角に差し掛かると皆が慌ただしさを忘れたように足を止めた。視線の先にあるのは「恐竜王国」福井のシンボル、フクイラプトルだ。原寸の3分の2サイズで全長約3メートル、高さ約1メートル。どこか愛くるしい顔立ちにうろこ状の皮膚、肉食獣らしい強靱(きょうじん)な足の筋肉や鋭いカギ爪が見事に表現されたそれは、約7万ピースのレゴ ブロックでできている。

 北陸新幹線の福井延伸を記念したもので、地元紙・日刊県民福井と県が共同で企画した。翌日、3月9日に控えたお披露目の式典を前に、制作者の三井淳平(みついじゅんぺい・37)が最後の仕上げに取り掛かる。恐竜が固定された台車に、子どもたちがつくった「福井の街並み」を並べていく。近未来感のある不思議な建物や乗り物、タワーや動物。精緻(せいち)なフクイラプトルの足元が、一気に賑々(にぎにぎ)しく華やいだ。

「子どもたちの想像力が生かされた、ごちゃごちゃしているけれどワクワクするこの感じ。レゴらしくていいですよね。精密な造形も表現できるし、自由に楽しむこともできるのがレゴ ブロックの魅力です。私のつくったフクイラプトルと子どもたちの街並みが合わさり、一つの作品なんです」

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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