都知事選への立候補を表明し、会見する蓮舫氏(24年5月)


 前述のとおり、東京都知事選挙に蓮舫氏が出馬し、しかも、小池氏と自民党の協力関係をうまく利用して、裏金問題を都知事選の争点にしようという妙手を繰り出したのは、裏金問題を忘れさせようとする岸田氏には特に痛い。

 「批判ばかりの蓮舫」という批判を展開しても、裏金に怒り心頭の都民・国民には、「何言ってんだ。批判されることをする自民の方が悪い」と返されて、またもや裏金問題に焦点が当たるという悪循環になっている。

 今後、裏金批判を恐れた小池氏が自民との関係を断てば、小池氏が勝っても自民勝利とは言えず、逆に小池氏が自民と裏の協力をすれば、おそらくそれが原因で小池氏が負けるということになりそうだ。いずれにしても、都知事選で小池氏に乗って「勝利」を演出し、立憲など野党の勢いを止めるということはできそうにない。

 つまり、岸田氏の命は9月の総裁選までとなる可能性が高いということだが、そう考えると逆に、岸田氏は、一か八かの大博打で会期末解散を行うという選択肢を捨てるわけにはいかないのではないだろうか。

 もちろん、自民党議員たちが岸田氏を羽交い締めにしてそれを阻止しようとする可能性が高いが、首相の権力は非常に強い。全閣僚が反対し、麻生太郎副総裁や茂木敏充幹事長が絶対反対と叫んでも、岸田氏がやると決めれば、解散はできないことはない。

 やるとすれば、立憲民主党などが内閣不信任案決議を提出したタイミングだろう。立憲がそれを恐れて逡巡すれば、陰で腰抜け批判を展開して不信任案提出に追い込むこともできる。不信任案を出されれば、国民に信を問うという大義名分で解散できる。

 そんなバカなことが起きるのかと思うかもしれないが、最近はバカなことしか起きないのが日本の政治だ。岸田氏は、意外に博打打ちの素質がある。

 突然自派閥の解散を打ち出して世間を驚かせたが、その結果、自民党の派閥は麻生派を除いて全て解散表明に追い込まれ、派閥政治は少なくとも表向きは崩壊し、首相の権力だけが突出する結果となった。

 岸田首相は、それくらい破壊力のある賭けに出ることができるということは覚えておいた方が良い。

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岸田首相のヤケクソ解散のシナリオ