そこで、岸田首相がヤケクソ解散という大博打に打って出た場合のシミュレーションを考えてみたのだが、意外と面白いことになりそうだ。
「もし」ということを言えばキリがなくなるので、一つのストーリーに絞ってみたい。それは、無謀な選挙の結果、予想どおり、自公過半数割れに陥るという筋書きだ。
その場合、リベラル勢力は、「政権交代だ!」と喜ぶかもしれないが、実は、そうなるとは限らない。外交・安全保障や憲法改正問題などについてかなりの隔たりがある立憲や共産党などのリベラル政党と日本維新の会や国民民主党のような右翼政党などが連立するには、かなり高いハードルがあるからだ。
一方、維新と国民は自民との政策の親和性が高い。公明党よりもはるかに自民に近いと言ってもよいだろう。とりわけ、自民保守派から見れば、彼らが重視する憲法改正や安保政策では、いつも公明に足を引っ張られてきたという思いがある。
公明と組むのに比べれば、維新や国民との連立など全く問題なしということになるだろう。
維新の馬場伸幸代表は、かねてから立憲は叩き潰すと豪語してきたくらいだから、立憲との連立よりも自民との連立の方に傾くはずだ。裏金問題でも、維新は、個人向けパーティーは残したいし、政策活動費についても新しい制度を作ると言って、10年間使途公表しないという今回の修正案のもとになる案を出していた。金権政党という意味でも、立憲よりもはるかに自民に近いのだ。
そう考えると、立憲、共産、れいわ新選組などのリベラル勢力だけで過半数を取れなければ、自民党政治を終わらせることはできないことがわかる。しかし、そこまで行くのは極めてハードルが高いというのが公平な見方ではないだろうか。
今回考えたシナリオでは、自民は大負けするが、それによって自公国維4党連立政権誕生となり、憲法改正や軍拡路線に前向きな純粋右翼政権が誕生するということになる。
それは、政策本位で考えれば、自民党としては、むしろ今よりも望ましい政治ができるということを意味する。
岸田首相は、この連立で首相の座にとどまることはできるのかというと、普通に考えると大敗した責任を問われて、総裁交代になる可能性が高いだろう。