相手の気持ちがわからない。人の話を黙って聞いていられない。いろんな症状になって現われる発達障害。精神科医・岩瀬利郎さんの著書から、特性による不思議な言動や考え方と対処の方法を解説する。

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 自分なりの強固な世界観を持っていて、相手の気持ちを想像することが苦手だったり、相手の言った言葉を字義通り受け止めがちだったりするASDの人。

 多動傾向があるため、人の話を黙って聞いていられなかったり、注意散漫で約束をすっぽかしたりすることがあるADHDの人。

 発達障害の人は、相手との関係性や反応を読むのが苦手なことが多く、周りが「えっ!?」と驚くようなその場にそぐわないことを言ってしまうときもあります。常にトラブルの火種を抱えて生きているようなもので、それは本人にとってもつらいことであるのは間違いありません。

 特に、日本が育んできた和を重んじる文化では、いわゆる〝あうんの呼吸〟で、みなまで言わずともお互いに理解し合えることを美徳とする側面がありますが、ASDの人もADHDの人も、「空気を読む」ことが非常に苦手。

 次ページからの事例を読み、そんな本人たちの言動の「なんで?」が理解できれば、イライラせずに受け止めることができるようになるはずです。
 

皮肉も社交辞令も通じず、言葉をそのまま受け取ってしまう

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"普通はわかる"は通用しないことも!

 ASDのKさん(26歳・女性)は、先輩の皮肉に気づかず、言葉通りに受け止めてしまい、先輩を怒らせてしまいました。ASDの人は、相手の表情や声のトーンから「これは本当の意味ではないな」と察するのが苦手なことがあります。

 社交辞令やリップサービスを真に受けたり、暗黙のルールがわからなかったりすることも少なくありせん。ですから、発達障害の人に対しては、伝えたいことは意味通りの言葉でストレートに伝えることが大切です。

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岩瀬利郎

岩瀬利郎

いわせ・としお/精神科医、博士(医学)。東京国際大学医療健康学部准教授。埼玉石心会病院精神科部長、武蔵の森病院院長、東京国際大学人間社会学部専任教授、同大学教育研究推進機構専任教授を経て現職。精神科専門医、睡眠専門医、臨床心理士、公認心理師。メディア出演も多数。

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