もしイラッとしてしまうようなら、発達障害の人は定型発達の人とは感覚が少し違う、ということを改めて意識してみてください。たとえば、日本では「粗茶ですがどうぞ」と言ったりしますが、文化的な背景が異なる外国の方には、自然とそうした表現を控えるのではないでしょうか。

 このように、“違う文化の人なんだ”と考えて接するのも、発達障害の人と付き合うひとつの手です。
 

じっとしていられないわが子に、ついイライラしてしまいます

 ADHDのDちゃん(9歳・女子) は、いつどこへ連れていってもじっとしていられません。人の話を聞かずにしゃべり続けたり、動き回ったりしてしまいます。

 このときも、診察室に入ってくるや、棚に置いてあったぬいぐるみを見つけてかけ寄り、手にとって大きな声で話しかけはじめました。そのとき、私やお母さんは、Dちゃんの視界から消えていますし、もちろん会話などは成立しません。

 注意散漫と多動性はADHDの代表的な特性であり、特にお子さんの場合は、その傾向がとても強く出ることがあります。

 また発達障害の人は、聴覚情報が苦手で、耳から入る言葉だけでは理解しづらいことがあります。集中してほしいときは、紙に描いた絵や文字を見せながら話しかけてみてください。

 たとえば、「座りなさい!」と強く言うより、座っている子の絵と「すわる」と書いた紙を用意しておいて見せたり、簡単な絵や文字を書いて見せながら話したりしてみましょう。

 集中できない特性は、本人の努力ではどうにもならないことがあります。そこで感情的に叱ったりすると、余計に落ち着きがなくなってしまうことも。冷静に向き合い、穏やかに言い聞かせましょう。オモチャが散らかっているなど、興味の対象が多いほど気が散ってしまうので、部屋をすっきりさせることも大切です。

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岩瀬利郎

岩瀬利郎

いわせ・としお/精神科医、博士(医学)。東京国際大学医療健康学部准教授。埼玉石心会病院精神科部長、武蔵の森病院院長、東京国際大学人間社会学部専任教授、同大学教育研究推進機構専任教授を経て現職。精神科専門医、睡眠専門医、臨床心理士、公認心理師。メディア出演も多数。

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