昨年3月の世界選手権で優勝し、表彰式後にイリア・マリニン(右)らと記念撮影する宇野昌磨。左は2位の車俊煥

 一方、田村さんは、引退を決めた要因について、

「イリア・マリニン(米)の存在と、昨シーズンのグランプリシリーズ日本大会(NHK杯)も影響したのでは」

 と分析する。

 NHK杯で宇野のフリー演技に対するジャッジの判定は、当時話題になった。宇野がフリーで跳んだ4本すべての4回転ジャンプに「q」(4分の1回転不足)判定がついた。結果、得点源となるジャンプのGOE(出来栄え点)が伸びずに、総合得点が大幅に抑えられた。

 田村さんはこう話す。

「あくまで映像上での判断ですが、宇野選手の特にトウループに関してのq判定は、他のグランプリシリーズの大会の判定に比べても逸脱した厳しさと感じました。(フィギュアの)名物記者のジャッキー・ウォン氏にも聞いてみましたが、やはり『厳しすぎ』との答えでした。他にも何人かのスケート関係者に意見を聞きましたが、誰もがこの判定には疑問を抱いています」

 技術力の高い選手同士の戦いで、得点を大きく左右するジャンプのGOE。選手は、より高難度のジャンプの完成度を高めることで、1つのジャンプで高得点を稼ぐ。ハイレベルで僅差の戦いにもなれば、ジャンプのqマークが1つ付くだけでも順位は変動する。宇野は演技後のインタビューで感情を抑えつつ、

「試合に出る意味を揺るがされるような試合になった」

 と話した。

マリニン、鍵山……台頭する若手ライバルたち

 宇野は昨シーズンから特に「ハイレベルな戦い」という表現で、ライバルの存在を意識してきた。とりわけ、若手で4回転アクセルを跳ぶマリニン(20)については、一目置いていた。昨年のグランプリファイナル後のテレビのインタビューではこう語っていた。

「今回、マリニン君が優勝しましたけど、今後彼がフィギュアスケート界を引っ張っていく存在になることは間違いないと思っているので、彼にとってちゃんとライバルでいられるように僕も最善を尽くしたいなと思っています」

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