「彼のジャンプを上回る選手は当分現れないと思わされるほど素晴らしい技術を持っていて、僕たちもジャンプは叶わなくても、それ以外の部分で何とか戦っていけるように試行錯誤しながら自分たちらしい個性を磨きながら戦っていこうと、たぶん皆さん思っていると思います」

「僕がネイサンやゆず君(羽生結弦)と共に戦ってきたときに感じていた気持ちと一緒で、やっぱり良きライバルであり、良き仲間である、そんな存在がいるというのはやっぱり僕にとっては一番のモチベーションになっている」

 そして、ライバルはマリニンだけではない。日本では鍵山優真(21)、フランスのアダム・シャオ・イムファ(23)。

 宇野は、昨シーズンの初戦(グランプリシリーズ中国大会)でイムファに敗れている。ショートでは、2位のアダム・シャオ・イムファに14点差をつけて首位発進したものの、フリーでは冒頭の得意の4回転フリップと4回転ループで失敗して2位。

「昨日は跳べて今日は跳べなかっただけ」

 イムファは自身の人生をテーマにしたフリーの演技で4本の4回転ジャンプと、2本の3回転アクセルを成功。のびやかな演技で世界王者の宇野を前に強さを見せた。演技後はリンクを去る前に、次の演技者である宇野がリンクにいるなかで宙返りをし、観客を沸かせた。演技直前のリンクでライバルが宙返りをして、喝采の中で去っていけば、次に滑る宇野は少なからず動揺したに違いない。

 しかし、宇野は落ち着いていた。試合後のインタビューも驚くほど充実した表情を見せ、こう話した。

「僕はショート同様結構いい演技だったんじゃないかな、と思います。もちろん、最初のジャンプ2つでミスが出てしまいましたけど、昨日は跳べて今日は跳べなかった、というだけで、悪くないという感想ではありますし、プログラムを通して今までジャンプばかりだったところが、ちゃんとつなぎやスピンに気が回っているというのはすごくいいところじゃないかな、と思います」

「やろうとする意思というのがちゃんと試合で現れたというのが、スケートをやってきてなかなかなかった経験なので、すごく良かったなと思います」

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