シーズン2戦目。前述した“疑問の採点”があったNHK杯は、2位に終わり、現役最後の試合となった今年3月の世界選手権では、マリニン、鍵山だけでなく、イムファにも敗れ、表彰台を逃した。
引退会見で記者から「競技界から離れることに未練はないか」と聞かれると、宇野はきっぱりとこう答えた。
「正直、未練は全くないです」
こうも言った。
「昔の映像とかを振り返ってみても、よく頑張ったな、と」
「両親もできると思っていなかったのでは」
会見では、やり尽くした思いからか、終始清々しい表情で笑顔が続いた。
「これだけ全力を注げる場所が存在したことは、すごく良かったと思っています。最後の1年間も、どの試合も全力で取り組んだ末の演技だったので、もちろん成功も失敗もたくさんあったかもしれませんが、僕にとっては失敗も成功も自分にとって宝もののような時間になったと思います」
「小さいころは人前でしゃべれないとか、すごく内向きな性格で、多分、両親も、氷上で一人で演技するというのがこの僕にできるとは思っていなかったと思うんです。自分が発信できるタイプじゃないからこそ性に合った競技というか環境だったと思います」
「昔は試合でできなかったとき、悔しいと落ち込んでいたんですけど、長年、21年間フィギュアスケートをしてきて、しっかり笑顔で終えられる選手になれたんだなと。こうなりたいと小さいころ思っていた選手に1歩近づいたんじゃないかな」
今後についてはこう語った。
「自分が心から踊るようなスケートをしていきたいと思っていて。競技から離れるので、自由にフィギュアスケートをやれる。やるもやらないも自由だし。ジャンプを跳ぶ、スピンをやる、何をやるにしても自分で選べるものなので、自分の生き方にもマッチしていると思う。すごく楽しみ」
自分を振り返り、称える言葉が多く、それが非常に気持ちが良かった会見だった。
「引退してまだ間もないんですけど、彼(宇野昌磨)はすごくよくやったな、と僕は思います(笑)」
これからも、自由に、のびやかに活躍する宇野昌磨を見続けたい。
(大崎百紀)