大地震が起きるたびに問題視されるのが避難所の環境整備。海外との「格差」も指摘されているが、改善策はあるのか。AERA 2024年5月20日号より。
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東日本大震災から災害支援を続ける災害支援団体「災害救援レスキューアシスト」代表の中島武志さんは、避難所の環境はここ10年以上改善されていないとして、こう指摘する。
「日本の避難所の環境は、海外と比較してもかなり悪いと思う。自治体が定める指定避難所でも何カ月も衣食住の環境が整わなかったり、避難生活のルールがうまく定まっていないことが多くあります」
台湾では個室テント
実際、海外との「格差」はたびたび指摘されている。4月、台湾東部を襲った地震の際は、震源に近い花蓮市の避難所の様子が日本でも話題になった。被害の範囲や避難者数、交通網の被災状況などが異なるので、能登半島地震とは単純比較できないが、花蓮市の避難所では発災2時間後にはプライバシーを確保できる個室テントが設置され、温かい食事、下着などの日用品のほか、アロママッサージまで提供されたという。
台湾でも避難所は自治体が設置するが、個室テントや食事などの物資提供、子どものケアなどのサービスはそれぞれ、得意とする民間団体が担っている。台湾・銘傳大学の邵珮君(ショウペイチュン)教授(都市防災)は、台湾の避難所事情についてこう説明する。
「台湾でも過去の災害の際は避難所環境の悪さが問題になっていました。そうした過去の反省や、日本の自然災害なども参考に防災計画がつくられています。また、台湾は自治体職員の数がそれほど多くなく、行政の力が十分ではありません。様々な場面で行政と企業や民間団体、個人ボランティアが連携することが当たり前になっています。民間団体やボランティアが地域の防災システムの中に組み込まれていて、自治体の防災訓練も一緒に運営するなど日ごろから連携のあり方を探ってきたことが、今回生きたと言えます」
一方、日本の避難所環境が改善しない要因はどこにあるのか。「生活の場としての視点が十分でない」と指摘するのは、「ピースボート災害支援センター」事務局長の上島安裕さんだ。
「自治体が行う避難所開設訓練は多くの場合、避難所をどうオープンし、受け付けや動線、区分けをどうするかという『立ち上げ』に特化しています。その後の生活の場として避難所をいかに運営していくかは、課題としては認識されつつあるものの、訓練や対策に十分に落とし込めていません」