能登半島地震は直下型地震で、台湾地震はフィリピン海プレートとユーラシアプレートの境界で起きた海溝型地震だった。
なぜ今、日本とその周辺で、大きな揺れが相次いでいるのか。自然災害に詳しい立命館大学の高橋学特任教授(災害リスクマネジメント)は「根本的原因は太平洋プレートにある」と見る。
「2011年3月の東日本大震災以降、日本の東側にある太平洋プレートの動きが活発化しています。太平洋プレートは1年に8~10センチほど東から西に動いていて、それがフィリピン海プレートと北米プレートを圧迫し各地でひずみが生まれ、北は北海道から、南は九州・沖縄、台湾まで地震が起きやすくなっています」
震源浅いと倒壊リスク
最近の地震の特徴として「震源の深さが比較的浅い」と言う。能登半島地震は16キロ程度、台湾地震は23キロ、四国で起きた地震は39キロだった。
「震源が浅いと周囲を激しい揺れが襲い、揺れが1往復するのにかかる『周期』が1秒程度と短いため、老朽化した木造家屋やビルなどが倒壊しやすくなります」(高橋特任教授)
前出の遠田教授は「今年が特に大きい地震が多いわけではない」と話す。
遠田教授は、昨年の4月と5月に能登半島はじめ各地で比較的大きな規模の地震が相次いだことから、1923年以降のM5以上の地震の統計を取った。すると、昨年の4月15日から1カ月間に起きたM5以上の地震は23回にのぼった。これは平均値である9回をはるかに上回った。それに比べると今年の同時期はまだ少ない、という。
「地震活動は月単位で『揺らぎ』がありますし、年単位で見ても多い年と少ない年とがあり、ここ2、3年は能登半島や沖縄、伊豆諸島など各地で群発地震が頻繁に起きています」
では、今年、震度5弱以上の地震が多く観測されるのはなぜか。遠田教授は、震源の深さが比較的浅かったり、震源が海域でも陸地との距離が比較的近いことなどが影響しているという。さらに、多くの人が気にした、能登半島地震と台湾地震、そして豊後水道を震源とした一連の地震の間に関連性はないと言う。
「一つ地震が起きると周辺で地震を誘発することがあります。しかし影響は、能登半島地震ほどの大きさでも距離にして周辺150キロ程度。台湾と豊後水道は直線距離で約1500キロなので、影響があったとは考えにくい」
(編集部・野村昌二)
※AERA 2024年5月20日号より抜粋